豚レンサ球菌は豚やヒトに髄膜炎や心内膜炎等を引き起こしうる人獣共通感染症起因菌であり、莢膜多糖の抗原性の違いにより30以上の多様な血清型に分類されている。近年、血清型が変異した強毒株による事例が発生しており、本菌によるさらなる新興感染症を制御する上で、流行血清型の把握とその多様化メカニズムの解明は必要かつ重要な学術的知見である。しかし、型別用血清が高価なため検査現場での血清型別が難しく、血清型に関する遺伝的情報も限られている。そこで、本研究課題では、全血清型株の莢膜合成関連遺伝子群を網羅的に解析して、血清型が30型以上に多様・分化した遺伝的背景を明らかにする。同時に、その情報から検査現場で利用可能な遺伝学的血清型別法も開発する事を目的としている。 平成23年度は現在、血清型別に使用されている全35血清型参照株の莢膜多糖合成に関わる遺伝子群[Capsular polysaccharide synthesis (cps) gene cluster]について比較・解析を行った。このうちの20血清型株については本研究により、塩基配列が明らかになった。比較・解析の結果、本菌の血清型は「cps gene clusterの交換による大規模な変異」及び「少数の関連遺伝子の塩基配列置換や欠失・挿入などの小規模な変異」の両方により多様性を創造していることが明らかとなった。 平成24年度は上記解析結果より明らかとなった、複数血清型共通遺伝子及び血清型特異的遺伝子をそれぞれグループ分けPCR及び型別PCRとして利用し、2回のマルチプレックスPCRでにより分離株の血清型を推定する型別法を開発した。200株以上の分離株について本PCR法を実施した結果、実際の血清型と相違があった株は認められなかった。以上から、本PCR法は血清型別に資する有用な方法として今後の利用が期待される。
|