研究課題/領域番号 |
23780311
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
竹前 喜洋 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・ウイルス・疫学研究領域, 研究員 (10584386)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | インフルエンザ / 鳥 / 豚 / 温度感受性 / 宿主特異性 |
研究概要 |
本研究は、豚と鳥の宿主体温が異なることに着目し、A型鳥インフルエンザウイルスの豚細胞における低温での増殖性獲得に関与するウイルス側及び宿主側の要因を明らかにすることを目的とする。平成23年度の研究実績については、以下の通りである。1.異なる宿主から分離されたA型インフルエンザウイルスの増殖至適温度の解析。野鳥(11株)、豚(17株)、人(6株)に由来するインフルエンザウイルスの33℃、37℃、41℃での感染力価を比較した。感染には様々な宿主に由来するウイルスが増殖可能であるMDCK細胞を用いた。野鳥由来のウイルスは、高温側(37-41℃)で高い増殖能を示した。一方で、豚と人由来のウイルスは、低温側(33-37℃)で高い増殖能を示した。2.豚肺胞上皮細胞培養系の確立。安楽死させた豚の肺をpronase処理し、肺胞上皮細胞群を選択的に培養し、凍結保存した。急速解凍した細胞群を、37℃, 5%CO2下で再培養し、コンフルエント状態の細胞群を得た。上皮細胞に特異的なケラチンに対する抗体と反応後に、フローサイトメトリー解析を行い、培養細胞群の約95%が上皮細胞であることを確認した。ウイルス感染の条件検討のために、TPCK-Trypsinをそれぞれ0~2.0ug/mlを含む培地で肺胞上皮細胞を培養した。その結果、ウイルス感染には、細胞シートを3日間以上維持できた0.25ug/mlのTrypsinが最適であることが判明した。3.鳥インフルエンザウイルスの低温増殖に関与するウイルス遺伝子の推定。低温での増殖能が低い鳥由来ウイルス(3株)を、豚肺胞上皮細胞(33℃)で12代連続継代した。引き続き、同条件での継代を行い、15~20代後の鳥由来ウイルスの増殖至適温度の測定と全遺伝子分節の塩基配列を決定し、変異の見られた遺伝子(アミノ酸)を同定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していた異なる宿主から分離されたA型インフルエンザウイルスの増殖至適温度の解析から、野鳥と豚に由来するウイルスの温度感受性に明白な違いがあることが明らかとなった。つまり、本研究課題で着目していた豚と鳥の宿主体温の違いが、ウイルスの宿主特異性に関係している可能性が示唆された。また、鳥インフルエンザウイルスの豚での増殖能を決定する要因を調べるために必須となる豚の肺胞上皮細胞の培養系が確立できた。鳥インフルエンザウイルスの豚細胞での低温増殖能に関わる遺伝子の推定のため、増殖至適温度の解析で得られたデータから低温での増殖能が低い鳥インフルエンザウイルスの選択が可能となり、現在豚肺胞上皮細胞に連続継代中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、鳥インフルエンザウイルスの豚細胞での低温増殖に関与するウイルス遺伝子の推定を行う。豚肺胞上皮細胞で15~20代継代した後の鳥インフルエンザウイルスのMDCK細胞や豚肺胞上皮細胞における温度感受性の変化やウイルス遺伝子(アミノ酸)の変異を調べる。本実験に並行して、現在公開されている塩基配列情報(データベース)から豚インフルエンザウイルスに特徴的なアミノ酸残基の解析を行い、宿主に特徴的なアミノ酸探索を行う。また、得られた結果を基に次年度以降に使用するウイルス株を選定し、必要な遺伝子のクローニングを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり使用する。
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