研究課題/領域番号 |
23780311
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
竹前 喜洋 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所 ウイルス・疫学研究領域, 任期付研究員 (10584386)
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キーワード | インフルエンザ / 鳥 / 豚 / 温度感受性 / 宿主特異性 |
研究概要 |
本研究は、豚と鳥の宿主体温が異なることに着目し、A型鳥インフルエンザウイルスの豚細胞における低温での増殖性獲得に関与するウイルス側及び宿主側の要因を明らかにすることを目的とする。平成24年度の研究実績については、以下の通りである。 1.異なる宿主から分離されたA型インフルエンザウイルスの増殖至適温度の解析。平成23年度に報告した野鳥及び七面鳥、豚、人に由来するインフルエンザウイルスの33℃、37℃、41℃での感染力価に加え、新たに鶏由来ウイルス9株のMDCK細胞における温度別感染力価を比較した。以上の結果、鳥ウイルスでは、野鳥及び七面鳥と鶏由来ウイルスとで異なる傾向が見られた。野鳥及び七面鳥由来の鳥ウイルス12株中9株は、33℃での増殖性が41℃よりも低かった。一方で、鶏由来の鳥ウイルス9株中7株は、33℃での増殖性が41℃よりも高かった。豚および人由来のウイルスは、全て33℃での増殖性が41℃よりも高かった。 2.鳥インフルエンザウイルスの低温増殖に関与するウイルス遺伝子の推定。MDCK細胞における低温条件(33℃)での増殖能が高温条件(41℃)よりも約400倍低かった野鳥由来ウイルス2株を平成23年度に作製した豚肺胞上皮細胞に感染させ、33℃で14代継代した結果、豚肺胞上皮細胞及びMDCK細胞における33℃での増殖性が41℃での増殖性よりも高いウイルスを得た。連続継代後の各ウイルスの全遺伝子分節の塩基配列を解析した結果、両ウイルスにおいてPB2遺伝子、PB1遺伝子及びHA遺伝子にアミノ酸置換が起きていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、本研究の目的である鳥インフルエンザウイルスの豚細胞における低温増殖能の獲得に、PB2、PB1及びHA遺伝子のいずれか或いはそれらが複合的に関与している可能性を見出すことができた。現在、低温増殖能に関与する遺伝子及びアミノ酸の特定のため、次の実験に必要となるリアソータントウイルスの作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
PB2、PB1遺伝子は、ウイルスリボヌクレオプロテイン(vRNP)複合体(PB2, PB1, PA、NPによる複合体)を構成する遺伝子の一部であり、本年度までに鳥ウイルスの豚への適応にウイルスのポリメラーゼ活性が関わっている可能性を得た。そのため、豚由来細胞内でRNA Polymerase Iにより擬似的なインフルエンザウイルスRNAを転写するプロモーター活性を持ったプラスミドの構築、または、当該遺伝子(アミノ酸)が導入されたリアソータントウイルスとオリジナルウイルスの遺伝子を持ったウイルスを作製し、ポリメラーゼ活性またはウイルスの増殖性を調べる。一連の実験をもって、鳥ウイルスの豚細胞での低温増殖に関わる遺伝子(アミノ酸)を特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり使用する。
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