研究課題/領域番号 |
23780315
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大田 寛 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (50431333)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 犬 / 腸炎 / サイトカイン / インターロイキンー17 / 粘膜バリア |
研究概要 |
本年度は、平成24年度の実験計画としていた、炎症性腸疾患(IBD)症例犬の十二指腸・結腸粘膜におけるインターロイキン-17(IL-17)の遺伝子発現解析および蛋白質検出方法の確立を先行して行った。ヒトのIBDの代表的な疾患であるクローン病や潰瘍性大腸炎ではIL-17が高発現し、その病態の形成に関わることが報告されている。本研究では、IBD症例犬の腸粘膜においてもIL-17の発現上昇が認められるか否かを検討した。遺伝子発現量を解析するリアルタイムPCRの測定系は既に確立済であったため、まず初めに、犬IL-17の組換え蛋白質を大腸菌にて合成し、ウサギ抗ヒトIL-17ポリクローナル抗体ならびにマウス抗ウシIL-17モノクローナル抗体と組換え犬IL-17との交差性を検討した。その結果、抗ヒトIL-17ポリクローナル抗体が犬IL-17と交差反応を示した。この抗体を用いて犬のリンパ節の免疫染色を行ったところ、IL-17陽性細胞の検出が可能であった。次に、IBD症例犬20頭の十二指腸粘膜ならびに6頭の結腸粘膜について、リアルタイムPCR法を用いてIL-17の遺伝子発現を解析した。その結果、IBD症例犬の十二指腸ならびに結腸のいずれにおいても、IL-17の遺伝子発現量は健常犬と比較して有意な増減は認められなかった。一方、近年国内でミニチュア(M)・ダックスフントに多発している結直腸の炎症性ポリープにおいて同様の解析を行ったところ、症例のポリープ部分ではIL-17の遺伝子発現が有意に増加し、またIL-17陽性細胞が増加していることも上記の抗体を用いた免疫染色により明らかとなった。M・ダックスフントの炎症性ポリープでは、病理組織学的に重度の好中球浸潤が認められ、IL-17が好中球性の炎症を惹起することから、IL-17が炎症性ポリープの病態形成に重要な役割を担うことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は平成24年度に計画していたインターロイキン-17(IL-17)の遺伝子および蛋白質発現解析が順調に進行したため、平成23年度に計画していたクローディン分子の発現解析に先行してIL-17の解析を行った。その結果、(1)タンパク質レベルで犬IL-17の発現解析が可能となり、(2)予定していたIBD症例犬の腸粘膜でのIL-17の遺伝子発現解析が終了し、さらに、(3)近年国内で多発し問題になっているミニチュア・ダックスフントの炎症性ポリープの結直腸粘膜でのIL-17の発現解析まで実施することが出来た。以上の結果より、予定していたIBD症例の解析に加え、炎症性ポリープ症例の解析も実施出来たことから、当初の計画以上に進展したと考えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、当初平成23年度に予定していたIBD症例犬の腸粘膜におけるクローディン分子の発現解析を実施する。クローディン分子のタンパク質の発現解析は、主にイムノブロット方で実施するが、昨年度予算でブロッティング装置を新規購入し、より最適なブロッティング条件の確立を行ってきた。本年度は、昨年度に確立したブロッティング条件を用いて、クローディン分子群のタンパク質発現解析を行っていく。また、クローディン分子の蛍光抗体法による免疫染色は、これまで使用していた蛍光顕微鏡より解像度の勝る共焦点顕微鏡(共通機器)を用いて解析を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の収支状況の次年度使用額は1万円以下であり、平成23年度はほぼ計画通りに予算が執行されている。平成24年度も、請求額を予定通り執行する計画である。
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