研究課題/領域番号 |
23780316
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高木 哲 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (50396305)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 組織球肉腫 / 表面抗原 / 定量的PCR / アポトーシス抑制因子 / Survivin / 犬 |
研究概要 |
(1)犬の組織球肉腫における診断基準の有用性を評価:定量的PCR法を用いた組織球肉腫における各表面抗原(CD11b, CD11c, CD86およびMHC classII)発現量の解析により、本腫瘍の診断基準を算出して、その有用性を前向きに評価した。組織球肉腫を疑った犬24例を対象に病理診断を基準として本法の診断精度を計測したところ、その正診率は91.7%であり、病理検査以外でこれまでに報告されている組織球肉腫の診断精度を上回る成績であった。本法は病理組織学的検査の欠点を補った有用性の高い補助的診断法であることが示唆された。(2)組織球肉腫の細胞株の性質とSurvivin発現量との関連性を評価:アポトーシス抑制因子のひとつであるSurvivinが組織球肉腫に過剰発現していたため、組織球肉腫の細胞株(3つ)の各Survivin発現量に対して、それぞれの細胞増殖率、抗がん剤感受性を比較し、その相関性を評価した。その結果、Survivin発現量の高い細胞株は増殖能が高く、抗がん剤感受性が低かった。in vitroにおいて、組織球肉腫の悪性挙動とSurvivinとの関連性が示唆された。(3)組織球肉腫(症例)の予後とSurvivin発現量との相関性を評価:犬組織球肉腫30例の予後(生存期間、治療反応期間)と各Survivin発現量を比較し、その予後因子としての有用性を評価したところ、Survivin発現量の高い症例は生存期間が短く、化学療法が奏功しにくいことが判明した。これらの結果からSurvivinは組織球肉腫の予後に反映している可能性が強く疑われたため、現在、Survivnを標的とした治療法を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
他大学および一般開業医の協力もあり、本研究に関連した症例を十分に蓄積することができたため、当初の計画通りに研究過程を進行させることができた。また、現在、遂行中である研究も予定している計画期間内に目的を十分に満たした結果を提出できると推測される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果からSurvivinが組織球肉腫の悪性挙動とその予後に関連していることが推測されたため、現在、Survivnを標的とした治療法を検討している。具体的には各細胞株のSurvivinを一過性にノックダウンし、それぞれの細胞増殖率、抗がん剤感受性、アポトーシスの誘導などをオリジナルの細胞と比較評価し、その結果次第でin vivoにおいても同様に評価する予定である。また今回、抗がん剤耐性獲得とSurvivin発現量との関連が示唆されたため、現在、抗がん剤耐性組織球肉腫のモデルマウスを作製し、本腫瘍のSurvivinを間接的にアップレギュレートしている。これらのマウスを従来の組織球肉腫のモデルマウスと比較して、その病態の変動を前述と同様にin vitroと in vivoで客観的に評価し、Survivinと予後との関連を深く調査していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定のプレートリーダーが同研究室の他の教員の研究費で購入できた。また、実験が順調に進行したためその分をマウスや生化学試薬などの購入に充てたが、総合して平成23年度は使用予定額を下回った。平成24年度はin vivoの実験を継続予定であり実験用マウスや生体用試薬の購入に充てる予定である。
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