研究課題
本研究において、抗癌剤の感受性解析により、イヌ・ネコ乳腺腫瘍への化学療法を目指すことを目的とし、一連の研究結果より両種の乳腺腫瘍において、ラパチニブ、ダサチニブが良好な抗腫瘍効果を示すことを実証した。この成果の意義として、これまで標準レジメンの確立されていない同疾患に対して、治療効果の期待できる新規治療法の可能性を示すことができ、これらの抗癌剤の治療導入は寛解率の上昇に大きく貢献すると考えられる。具体的には、施行した抗癌剤数を8種類から25種類へと増やすことで、抗癌剤の感受性の相違および分類と抗癌効果の傾向を見出すことができた。また、臨床応用可能と考えられたラパチニブは、細胞株に投与後、網羅的遺伝子発現解析により発現変化する遺伝子群の同定を行うことができ、同抗癌剤投与による分子機序の一端を解明することができた。また、ネコ乳腺腫瘍細胞株では転移に関連する上皮間葉移行(EMT)のマスター因子であるsnailの発現が見られたことより、同分子の遺伝子ノックダウン後、抗癌剤を投与による感受性の差を見出した。この結果はEMTによる癌転移において転移巣で効果のある抗癌剤を示すことができたと考えられ、悪性度の高いネコ乳腺腫瘍の化学療法において有用な成果を示すことができた。しかしながら、臨床症例における標的分子の免疫組織化学染色において、抗体の交差性により評価可能な陽性像の判定が困難であったことと、生検症例の初代培養において、培養癌細胞数の不足や線維芽細胞の増生等で、癌細胞特異的な効果の是非を判定することが困難であったことが本研究の課題として挙げられた。これらの成果を元に、ラパチニブおよびダサチニブのトランスレーショナルリサーチを行うべく、同抗癌剤の安全性試験を実施している。至摘投与濃度を決定後、実際の臨床症例に治験を行うことで、本研究の成果を実際に臨床応用し治癒率の上昇を目指す。
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