研究課題
平成24年度は前年度に行った健常犬での運動療法の方法を応用し実際に糖尿病犬に運動療法を行い、血漿代謝産物の測定および骨格筋のバイオプシーを行い、各種遺伝子のmRNA発現を検討した。インスリンは犬の糖尿病において一般的に使用される中間作用型のNPHインスリンを用いた。結果として血糖値の日内変動においては、運動前(0week)と比較して、運動後1、2、3、4週間で有意な変動は認められなかったものの、低下傾向を示した。空腹時の血液生化学検査においては、グルコース、中性脂肪およびコレステロールでは運動前後において有意な変動は認められなかった。NEFAでは、有意な低下が認められ、0weekが0.70mEq/Lに対し、3週間後では0.35mEq/Lと有意に低下した。ASTにおいては、運動開始前後で有意な変動は認められなかった。クレアチニンキナーゼでは、有意な低下が認められ、0weekが175IU/Lであったのに対し、運動開始3週間後では137 IU/Lと有意な低下が認められた。乳酸脱水素酵素においても、有意な低下が認められた。血糖コントロールマーカーである糖化アルブミンGA(%)においては、有意な低下が認められ、controlが27.2%に対し運動開始3週間後では25.2%、4週間後では24.7%であった。体重においては、運動開始前後で変動は認められなかった。本研究より、インスリン依存性糖尿病犬に対し、長期間の運動を行なうことで、GAおよびNEFAの低下をもたらすことがわかった。よって、糖尿病犬において運動療法を行なうことによって、血糖コントロールの改善が期待でき、糖尿病管理において有用であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
24年度の実績より、糖尿病犬において運動療法が血糖コントロールマーカーである糖化アルブミンを低下させ、血糖コントロールを改善する可能性が示された。したがって、研究当初の目的である運動療法の糖尿病犬に対する有用性が一部証明されたと考えられるため。
今後はさらに詳細にトレッドミルなどを用いて運動療法を行っていく必要があると考える。また運動強度を変えることにより、血糖コントロールにどのような変化をもたらすかを検討する必要がある。
次年度は23年度および24年度と同様に、実験試薬や測定キットの購入や、学会発表のための旅費および本研究結果の投稿のための費用に充てる予定である。
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