研究課題/領域番号 |
23780333
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
服部 聡 山形大学, 農学部, 助教 (40373352)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 微生物生態学 / 汽水 / 堆積物 / メタン代謝 / 古細菌 |
研究概要 |
本研究は山形県最上川支流河口域の極浅部水深領域の汽水堆積物に生息するメタン代謝古細菌の生理生態を明らかにすることを目的としている。堆積物試料の採取は半円錐型試料採取器を用いた。これにより深度情報を維持しつつ堆積物の取得を行った。採取後の試料は現場にて深度ごとに約10 cm間隔で切り出し、脱酸素処理後ただちに研究室に持ち帰った。また、堆積物を飽和NaCl溶液に密封保存したものを溶存メタン濃度測定用試料とした。各々の深度の堆積物試料は無菌嫌気環境にてスラリー調製用、酸化還元電位測定用、水分含量測定用、培養用に一部を取り分けた。残りの試料は高速遠心分離処理により間隙水を取得し、各種イオン、pH、電気伝導度の測定に供した。また、間隙水の一部をバイアル瓶に分注、アルゴンガスで脱酸素処理後密封し、スラリー用溶媒を作成した。これに各々の深度に対応する堆積物を添加し、25度でインキュベート、経時的に気層部成分を分析することでメタン生成活性の評価を行った。別途安定同位体標識メタンガスおよび硫酸イオン存在下でのインキュベートも行った。酸化還元電位はアルゴンガス下で堆積物に電極を挿入することにより測定した。実験の結果、当該堆積物はいずれの深度においても-300 mV以下と極めて嫌気的な環境にあることが明らかとなった。間隙水の成分分析においては、堆積物表層部から深層部に向けて各種イオン濃度の段階的な減少が見られた。一方、溶存メタン濃度およびメタン生成活性は堆積物深層部が最も高く、表層に向けて低下した。これらの情報に基づき、硫酸イオンとメタンの共存する堆積物深度領域のイオン組成を模した培養用絶対嫌気培地を作成し、各種基質存在下で同深度の堆積物を希釈添加して25度で培養を行った。現在、当該深度由来のメタン生成古細菌および硫酸還元細菌の集積培養を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
垂直情報に基づく堆積物の取得および、それらの性状解析やメタン代謝微生物の活性評価、関連微生物の分離培養など、実施年度における計画目標に概ね到達していると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき、クローンライブラリー法による嫌気的メタン代謝関連微生物群の菌叢解析を行う。また、当該微生物の純粋分離および共生系再構築を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
各々の深度の堆積物に含まれる嫌気的メタン代謝関連微生物群の菌叢解析、嫌気的メタン代謝微生物の培養・分析のために使用する。
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