研究課題/領域番号 |
23780334
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
小島 俊雄 茨城大学, 農学部, 准教授 (70311587)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ダイズ / ミヤコグサ / 塩ストレス / アルマジロリピート / タンパク質間相互作用 / 耐塩性 |
研究概要 |
機能未知タンパク質をコードするダイズ遺伝子GmTDF-5をシロイヌナズナで過剰発現させると耐塩性が上昇する。本研究では、GmTDF-5による植物の塩ストレス応答・耐性機構の活性化プロセスを明らかにし、同遺伝子を利用した耐塩性ダイズの開発へと展開できる研究基盤の構築を目指している。本年度は、GmTDF-5の機能解明に向け、ダイズでは得難いオミクス情報や変異系統を利用した機能解析を展開するため、マメ科のモデル植物ミヤコグサからGmTDF-5ホモログ(LjTDF-5)を単離し、タンパク質構造とストレスに対する応答性、および細胞内局在性を特徴付けた。その結果、LjTDF-5はGmTDF-5同様、タンパク質間相互作用に関与するアルマジロリピートを持つ核局在タンパク質をコードし、塩や乾燥に対して強く誘導されることが明らかとなった。しかし、LjTDF-5にはGmTDF-5のN末端領域にあるロイシンジッパーが存在せず、ダイズでは見られなかった根での塩ストレス応答が確認されるなど、異なる特徴が見られた。この結果は、GmTDF-5が関与する耐塩性機構は植物種により器官・組織分布が異なり、そこでの耐性獲得に必要なタンパク質と結合している可能性を示唆した。そこで、GmTDF-5およびLjTDF-5の結合タンパク質を同定するため、プルダウン解析に必要な組換え型タンパク質(ドメイン欠失型を含む)に関する大腸菌発現系を構築し、さらには共免疫沈降法で使用するGFP融合型タンパク質を発現するミヤコグサ、シロイヌナズナ培養細胞株を確立した。また、GmTDF-5、LjTDF-5が植物の耐塩性能と農業上有用形質に与える効果を検証できる形質転換植物を作出するため、計画した全ての形質転換用プラスミドの構築を終え、現在、ミヤコグサを宿主とする過剰発現系統と、LjTDF-5に関する発現抑制系統の作出を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GmTDF-5やLjTDF-5に結合するタンパク質の同定に向けて、必要な実験材料を準備することができた。また、ミヤコグサホモログLjTDF-5のストレス応答性や細胞内局在に関する解析から、GmTDF-5が関与する耐塩性機構は植物種により器官・組織分布が異なる可能性を見出した。これはGmTDF-5とLjTDF-5の結合タンパク質が異なることを示唆しており、ホモログごとの同定が必要であることを示した。形質転換植物の作出状況も含め、実験の準備状況と、研究を進める上で重要な知見が得られたことから「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、プルダウン解析と共免疫沈降法により、GmTDF-5やLjTDF-5に結合するタンパク質を分離精製し、配列解析や遺伝子クローニングなどにより結合タンパク質を同定する。以降、植物のデータベースを駆使して、結合タンパク質の遺伝子機能やストレス応答性に関する情報を収集し、同タンパク質が関与する塩ストレス応答・耐性機構を特定する。また、GmTDF-5を過剰発現する、もしくは発現抑制した形質転換植物を塩ストレス存在下で栽培し、その耐塩性能を評価するとともに、マイクロアレイにより各系統の内在遺伝子群の発現、特に塩・乾燥応答遺伝子群の発現に与えるGmTDF-5の影響を網羅的に調査し、同遺伝子による塩ストレス応答・耐性機構の活性化プロセスを明らかにする。耐塩性ダイズの開発に向けては、GmTDF-5の発現を制御した形質転換植物の形質、特に個体の大きさや分げつ数、莢数、種子の稔性、タンパク質・脂質含量などを調査し、同遺伝子の発現がダイズやモデル植物の有用形質に与える効果を検証する。以上の成果をもとに、これまで解明されていなかったGmTDF-5による塩ストレス応答・耐性機構の活性化プロセスの分子学的研究を完成させ、同遺伝子が耐塩性ダイズの開発に利用できる有用な遺伝子資源になるかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
GmTDF-5やLjTDF-5に結合するタンパク質の同定と機能解析、形質転換植物の作出や栽培に必要な試薬・器具等の消耗品を購入する。また、GmTDF-5の発現を制御した形質転換植物における塩・乾燥応答遺伝子群の発現性を網羅的に調査するため、マイクロアレイ実施経費を計上する。そのほか、研究成果を発表するための旅費と、投稿論文の英文校閲費や論文別刷代を計上する。
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