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2012 年度 実施状況報告書

耐塩性ダイズの開発を目指した新規有用遺伝子の耐塩性機構活性化プロセスの解明

研究課題

研究課題/領域番号 23780334
研究機関茨城大学

研究代表者

小島 俊雄  茨城大学, 農学部, 准教授 (70311587)

キーワードダイズ / 塩ストレス / 耐塩性 / アルマジロリピート / ユビキチン-プロテアソーム / タンパク質間相互作用
研究概要

ダイズの塩ストレス応答遺伝子GmTDF-5は、タンパク質間相互作用に関わるアルマジロリピートを持つ機能未知なタンパク質をコードしている。同遺伝子の過剰発現によって、シロイヌナズナの耐塩性が上昇したことから、耐塩性機構への関与が示唆されている。本研究では、GmTDF-5による植物の塩ストレス応答・耐性機構の活性化プロセスを明らかにし、同遺伝子を利用した耐塩性ダイズの育種へと展開できる研究基盤の構築を目指している。平成24年度はGmTDF-5の生化学的諸性質の解明に取り組んだ。
塩ストレスに対するGmTDF-5タンパク質の組織特異的発現性を明らかにするため、同遺伝子の転写誘導が確認されたダイズ組織を用いてウエスタン解析を行った。その結果、GmTDF-5の発現はいずれの組織からも検出されなかった。同様の結果がGmTDF-5を過剰発現するシロイヌナズナ植物体や培養細胞T87株を用いた解析でも見られ、いずれも転写は確認されるが、タンパク質は検出されなかった。そこで、GmTDF-5は翻訳後、ユビキチン-プロテアソームによって速やかに分解されると仮定し、26Sプロテアソーム阻害剤(MG132)の添加によるGmTDF-5の分解への影響を調査した。ダイズのタンパク質抽出液に組換えGmTDF-5タンパク質を添加したin vitro試験の結果、GmTDF-5の分解はMG132によって抑制されることが明らかとなった。以上の結果は、GmTDF-5が塩ストレス応答・耐性機構のプロセスでユビキチン-プロテアソームによる制御を受けることを示した。一方、シロイヌナズナ培養細胞を用いた耐塩性試験から、GmTDF-5を過剰発現する系統は野生株と比べて耐塩性が減少しており、GmTDF-5の機能発現には組織や発達段階に特異的なタンパク質と相互作用する必要があると推察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

GmTDF-5は翻訳後、ユビキチン-プロテアソームによって速やかに分解されることが証明され、GmTDF-5による植物の塩ストレス応答・耐性機構の活性化プロセスの一端が明らかとなった。さらに、培養細胞を用いた耐塩性試験の結果が植物体の結果と異なることから、GmTDF-5が組織や発達段階特異的に存在するタンパク質と相互作用していることが示唆された。これらの結果は、相互作用タンパク質の探索を含め、今後研究を進めていく上で有用な情報となった。現在、酵母ツーハイブリッドシステムによる相互作用タンパク質の同定と、マメ科のモデル植物ミヤコグサを宿主とするホモログ遺伝子LjTDF-5の過剰発現系統とRNAi抑制系統の遺伝子型・表現型の解析を進めている。
以上、平成24年度の研究成果および準備状況と、平成23年度研究成果を学術論文Plant Molecular Biology Reporterに発表できたことから「おおむね順調に進展している」と評価した。

今後の研究の推進方策

今後は次の4項目について解析を進める:(1) GmTDF-5タンパク質の生化学的諸性質の解明:MG132を用いたin vivo試験を実施し、GmTDF-5の塩ストレス応答・耐性機構の活性化プロセスでユビキチン-プロテアソームによる機能制御が生じていることを確認する、(2) GmTDF-5と相互作用するタンパク質の分子生物学的特徴付け:酵母ツーハイブリッドシステムにより同定し、植物データベースを用いた遺伝子機能の特徴付けやストレス応答性等から塩ストレス応答機構における生理的役割を明らかにする、(3) GmTDF-5が内在遺伝子群の発現に及ぼす影響:ミヤコグサを宿主とするLjTDF-5過剰発現系統・RNAi抑制系統における内在遺伝子の発現を網羅的に調査し、GmTDF-5によって活性化される耐塩性機構に関わる遺伝子(群)を特定する。さらに、各系統の耐塩性を定量的に評価し、LjTDF-5の発現量との相関を明らかにする、(4) GmTDF-5を用いた耐塩性ダイズの育種:シロイヌナズナやミヤコグサでの解析結果を踏まえ、遺伝子発現を効率化させたGmTDF-5発現ダイズ品種を作出し、耐塩性のほか、個体の大きさや莢数、タンパク質・脂質含量等の農業上有用形質への影響を明らかにする。
以上の成果をもとに、機能未知タンパク質GmTDF-5による塩ストレス応答・耐性機構の活性化プロセスの分子学的研究を完成させる。さらには同遺伝子が耐塩性ダイズの開発に利用できる有用な遺伝子資源になるかを検証する。

次年度の研究費の使用計画

上記の研究項目「GmTDF-5タンパク質の生化学的諸性質の解明」「GmTDF-5と相互作用するタンパク質の分子生物学的特徴付け」「GmTDF-5が内在遺伝子群の発現に及ぼす影響」「GmTDF-5を用いた耐塩性ダイズの育種」に必要な試薬・器具等の消耗品を購入する。そのほか、研究成果を発表するための旅費と、投稿論文の英文校閲費や論文別刷り代を計上する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Molecular characterization of a novel armadillo repeat-like protein gene differentially induced by high-salt stress and dehydration from the model legume Lotus japonicus2013

    • 著者名/発表者名
      Kojima T., Kinoshita M., Yamada T., Umezaki S., Iwaizako M., Saito Y., Noguchi K., Takahara H.
    • 雑誌名

      Plant Molecular Biology Reporter

      巻: 31 ページ: 698-706

    • DOI

      10.1007/s11105-012-0542-3

    • 査読あり
  • [学会発表] 新奇ダイズ塩ストレス応答遺伝子を導入したシロイヌナズナ培養細胞と植物体の耐塩性比較

    • 著者名/発表者名
      斎藤 祐一、高原 英成、小島 俊雄
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス(宮城県)
  • [学会発表] ダイズの耐塩性を制御する機能未知アルマジロリピートタンパク質の塩ストレス応答性

    • 著者名/発表者名
      佐藤 光朗、右田 和琴、斎藤 祐一、野口 和斗、高原 英成、小島 俊雄
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス(宮城県)

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公開日: 2014-07-24  

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