ダイズの塩ストレス応答遺伝子GmTDF-5は、タンパク質間相互作用に関わるアルマジロリピートを持つ機能未知なタンパク質をコードしている。本研究課題では、GmTDF-5による植物の塩ストレス応答・耐性機構の活性化プロセスを明らかにし、同遺伝子を利用した耐塩性ダイズの育種へと展開できる研究基盤の構築を目的とした。 本研究の結果、(1) 遺伝子構造、塩や乾燥ストレスに対する応答性、核局在性といったGmTDF-5の特徴は、異なる植物由来のホモログ遺伝子でも見られるが、組織発現性については違いが見られること、(2) GmTDF-5の過剰発現が宿主シロイヌナズナにもたらす効果は、植物体を用いた場合、耐塩性が著しく上昇するのに対して、培養細胞を用いた場合には低下すること、さらには両者の間で水分ストレス応答遺伝子群の発現に違いが見られることから、GmTDF-5の機能発現に組織や発達ステージ特異的に存在するタンパク質との相互作用が必要であること、(3) GmTDF-5タンパク質は選択的なタンパク質分解系として知られるユビキチン-プロテアソームによって制御され、ユビキチン化の標的となるリジン残基がそのN末端側に存在すること等、を明らかにした。なお、GmTDF-5が強く転写されているダイズ成熟葉を用いた酵母ツーハイブリッドシステムにより、相互作用タンパク質の同定を試みたが、候補遺伝子の特定には至らなかった。 以上のことから、GmTDF-5が特定のダイズ組織に存在するタンパク質と複合体を形成し、ユビキチン-プロテアソームの厳密な制御下において水分ストレス応答遺伝子群を活性化させる核局在型の制御タンパク質として機能することが推察された。
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