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2011 年度 実施状況報告書

山地流域に形成される雲霧帯の時空間分布に着目した森林群集の成立維持機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23780335
研究機関新潟大学

研究代表者

伊豫部 勉  新潟大学, 災害・復興科学研究所, 特任助教 (50397155)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード雲霧 / 大佐渡山地 / スギ原生林 / 熱収支 / 水収支 / 林床面蒸発量
研究概要

2011年度は,雲霧帯の存在が確認されている新潟県大佐渡北部において,異なる標高での霧の発生状況を長期観測し,流域に発生する霧の時空間分布を明らかにすることと,霧の発生が森林内の熱収支,水収支に与える影響評価を行うことを目的として,以下の項目について現地観測を行った。1.流域に発生する霧の時空間分布を評価するため,標高の異なる3地点にインターバルカメラを設置し,2011年5月から10月にかけて長期画像撮影を行った。大佐渡山地北部の稜線部に位置する関越(標高750m)での霧の発生割合は,6月から10月にかけた約5ヶ月間のうち約65%の日で霧が観測され,特に6~7月の霧日数が多かった。一方,時間別にみるとほぼ一定となり,どの時間でも発生しうることがわかった。2.稜線付近に分布するスギ原生林内において,霧の発生と林床面蒸発量との関係について評価するため,2011年9月に約5日間の集中観測を実施し,現地の非かく乱土壌を詰めた容器を林床に設置し,その重量を定期的に計測することで土壌水分変化量を算出した。また,森林構造の指標として開空率を測定し,土壌水分変化量の空間的ばらつきを森林構造との関係から評価した。その結果,霧発生時には蒸発量も小さく,場所による蒸発量のばらつきも小さくなる傾向を示した。一方,霧非発生時の林床面蒸発量は霧発生時に比べて大きく,林冠の開空率が大きな場所ほど蒸発量も大きくなる傾向を示した。3. スギ原生林内において林床面蒸発量に寄与する熱収支特性を霧の発生との関連から評価するため,2011年9月に林内において放射収支計および微気象観測機器を設置し,10月まで各種観測を実施し基礎データを取得した。現在,林床面蒸発量の定量的評価に向けて検討を行っている段階である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大佐渡山地北部に発生する霧の発生状況については,当初の計画通りにインターバルカメラを用いた霧の観測と気象観測を長期間実施し,霧が形成される高度と気象環境との関係を解析する基礎データを得ることができた。また,スギ原生林内における土壌水分変化量に関する現地調査から,霧の有無,林冠構造の違いによる林床面蒸発量の抑制効果について興味深い結果が得られた。一方,スギ原生林内における熱収支・水収支観測は,当初計画では現地アクセスが可能となる5月から実施する予定であったが,時間的制約により雲霧の発生頻度が低くなる9月より開始した。霧の多発期における観測データの取得が遅れがちであるが,全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる。

今後の研究の推進方策

これまで現地で実施してきたモニタリング・フィールドワークについては,2012年度も引き続き実施し基礎的データの蓄積を行う。インターバルカメラを用いた霧の時空間分布については,当該流域における2009年,2010年の霧の発生状況と発生時の気象状況に関する過去のデータと照らし合わせながら,霧の発生プロセスについて今後解析する予定である。スギ原生林内における熱収支解析については,霧の多発期を含めて季節内変動が抽出できるように,2012年度は出来るだけ早い時期から森林内での熱収支,水収支観測を実施する予定である。また,観測サイトから500m離れた開地の自動気象観測ステーションのデータを用いて,森林内外での気象特性および熱収支特性について霧の発生との関係について解析を行う。スギ原生林内での土壌水分量の調査については,林分構造と林床面蒸発量の関係を統一的に把握するため,樹種,林分密度などの異なる林分での測定を実施していく必要があると考えられる。

次年度の研究費の使用計画

1.設備備品費:スギ林内における林内雨の観測体制を強化するため,転倒マス式雨量計(FieldPro TR525MM)とパルスデータロガー(Hioki LR5061)を新たに2セット追加購入し,現地に増設する。また,研究資料として研究分野に関連する図書(森林水文学,森林生態学,土壌学等)を購入する。2.消耗品:各種観測機器のバッテリー及び集中観測時に必要な消耗品を購入する。3.国内旅費:現地での定期観測(約2日間滞在,観測機器の設置,メンテナンスおよびデータ回収等のため,5月~12月にかけて月1回現地に赴くことを想定),集中観測(約5日間滞在,6~9月,計3回),研究成果発表の旅費として使用する予定である。4.謝金及びその他の経費:現地調査補助のための謝金,データ通信費,論文投稿料,研究資料複写費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 大佐渡山地の霧と気象2011

    • 著者名/発表者名
      河島克久
    • 雑誌名

      新潟応用地質研究会誌

      巻: 第76号 ページ: 55~60

  • [学会発表] 大佐渡山地のスギ原生林における雲霧の発生頻度とその成因2011

    • 著者名/発表者名
      坂井浩紀
    • 学会等名
      日本水文科学会
    • 発表場所
      北海道札幌市
    • 年月日
      2011年10月8日~9日

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公開日: 2013-07-10  

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