研究課題/領域番号 |
23780339
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小西 照子 琉球大学, 農学部, 准教授 (30433098)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | クラミドモナス / UDP-アラビノース / 植物細胞壁 |
研究概要 |
本研究課題では細胞壁糖鎖であるアラビナンやアラビノース残基の合成の基質であるUDP-アラビノフラノースを生成する酵素、UDP-アラビノピラノースムターゼ(UAM)について研究を行っている。本年度はUAMの酵素科学的性質を明らかにするため、UAMのリン酸化修飾について検討を行った。これまでの申請者らによるUAMの研究で、クラミドモナスから精製したネイティブのUAMと大腸菌で調製した組換えUAMの酵素活性を比較すると、UDP-アラビノフラノースへの親和性は両者とも大差がないのに対し、UDP-アラビノピラノースに対する親和性は著しく異なることが明らかとなった。これによりUAMは基質の親和性を変化させることにより酵素活性を制御していることが推察された。実際にUAMと同一タンパク質であるRGPと呼ばれるタンパク質がリン酸化されているとの報告もあることから、UAMがリン酸化によりその酵素活性を制御している可能性が推察された。それゆえ、本年度ではUAMのリン酸化修飾について検討した。 クラミドモナスから精製したUAMはリン酸化タンパク質を染色する試薬では染色されず、また、リン酸化されたセリン残基を認識する抗体もUAMタンパク質を認識しなかった。このことより、精製したクラミドモナスUAMはリン酸化修飾されていないことが示唆された。さらに、精製UAMをアルカリフォスフターゼで処理しても、その酵素活性に影響は見られなかった。アルカリフォスファターゼはタンパク質のリン酸基を外す働きがある。このことより、UAM活性にリン酸化が影響しないことが示唆された。以上のことより、クラミドモナスUAMはリン酸化修飾以外の何らかによって基質への親和性を変化させ、酵素活性を制御していることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で解明するUAMの機能について、酵素活性制御機構にリン酸化が関与していない可能性が高いという新たな知見が得られた。当初立てていた研究の仮説とは異なるデータではあったが、UAMがリン酸化以外の活性制御機構を持っている可能性が示唆され、UAMの酵素科学的性質について明らかにすることができた。以上の点で、研究はおおむね順調に進展していると言える。今後も計画通り実験を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
クラミドモナスUAMがリン酸化されていないということが示唆されたため、今後はUAMの結晶構造解析を検討し、酵素の立体構造を解析することで、UAMの酵素活性制御機構を明らかにしていく。それと同時に、クラミドモナスの細胞成長におけるUAMの役割についても検討する。特に、クラミドモナスにはUDP‐ガラクトピラノースムターゼが存在し、この酵素はUDP-ガラクトフラノースとUDP-ガラクトピラノースの相互変換を触媒する。この酵素はまたUDP-アラビノースの変換も行い、UAMと同様の酵素反応を触媒するが、その反応機構は大きく異なる。植物ではUAMのみ、微生物ではUDP-ガラクトピラノースムターゼのみが存在し、両者は住み分けられていると考えられていたが、クラミドモナスには両者が存在する。同様の反応を触媒する酵素がなぜクラミドモナスには存在するのか。UAMとUDP-ガラクトピラノースムターゼ、この両者の細胞成長における機能を明らかにする。 クラミドモナスは同調培養を行い、細胞全てを同じ生育ステージに揃えることが出来る。そこで、同調培養した細胞からmRNAを抽出し、UAMおよびUGM遺伝子の発現解析を行う。これにより両酵素遺伝子の発現時期を明らかにできる。 また、UAMを過剰発現させたクラミドモナス形質転換体を作成し、細胞壁合成におけるUAMの機能について解明していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は同調培養させた細胞の各ステージにおけるUAMおよびUGMの遺伝子発現解析を行う。同調培養させたクラミドモナスの各ステージの細胞を回収し、それぞれの細胞から得られたmRNAを鋳型として合成されるcDNAを用いたリアルタイムPCRを行い、それぞれの遺伝子発現量を調べる。このため、平成24年度の研究費は主にRNA抽出、cDNA合成、およびリアルタイムPCRを行うための試薬購入のために使用する予定である。
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