研究課題
陸上植物の細胞壁糖鎖は品種間、生長過程、部位によって大差がなく保存性が高いが、一方、海洋植物、即ち海藻の糖鎖は品種により異なり、また、同品種でも生育場所、時期によりその種類や構造が大きく異なっている。藻類における細胞壁糖鎖の研究はあまり進んでおらず、糖鎖構造の知見はあるものの、その生合成メカニズムについては未だ明らかにされていない。藻類は陸上植物に比べて10倍以上もの炭素固定能を有し、次世代のバイオ燃料生産原料として注目されている。そのため、本研究課題では、植物でも藻類に着目し、藻類であるクラミドモナスの細胞壁糖鎖合成に関与する酵素の機能を明らかにすることを目的として研究を行った。具体的にはクラミドモナスから細胞壁合成に関与する酵素であるUDP-アラビノピラノースムターゼを精製し、その酵素特性について検討した。この酵素は陸上植物にも広く分布し、細胞壁糖鎖のアラビノースの基質を合成する酵素である。この酵素の最適温度や最適pHなどを調べた結果、既に同定されている陸上植物由来の酵素と大差は見られなかった。即ち、本酵素は植物の水中でも陸上でも植物が生きるためには必要な酵素であり、その働きは水陸に関わらず、同じであることがわかった。次に、クラミドモナスの細胞分裂時における細胞壁合成の仕組みを明らかにするために、細胞壁合成に関わっている酵素遺伝子11種について細胞成長の異なる過程における細胞から遺伝子を取り出し、発現量を調べた。その結果、細胞の肥大時に必要な酵素遺伝子と細胞分裂時に必要な酵素遺伝子など、11種遺伝子の働きが細胞の成長過程によって異なることが分かった。このことより、クラミドモナスにおいては、細胞分裂時に全ての細胞壁多糖が一斉に合成されるというわけではないことが示唆された。この結果については、今後さらに研究を進めて行く予定である。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 77 ページ: 1874-1878
10.1271/bbb.130302