研究課題
既往の多くの研究では、脱窒の電子供与体として有機物が注目されてきたが、還元型の硫黄も脱窒の電子供与体となりうる。したがって、含硫鉱物の豊富な秋田県では、還元型の硫黄を電子供与体とした脱窒(硫黄脱窒)が卓越しているかもしれない。しかし、生態系における堆積物や土壌中の還元型の硫黄脱窒に関する報告例は限られる。本研究の目的は、生態系における硫黄脱窒の可能性とそのプロセスの相対的な大きさを評価し、地下水や河川水質へおよぼす影響を明らかにすることである。期間を延長したH26年度は、世界土壌科学会議(WCSS World Congress of Soil Science)にて研究成果を発表した。研究期間全体を通した成果として、八郎湖流域内の河川源流域および八郎潟干拓地内において堆積物の脱窒活性を測定した結果、硫黄脱窒のシグナルを検出することに成功した。河川源流域においても硫黄含量の高い地点が認められ、海成起源の堆積岩の分布を反映したものと考えられ、硫黄酸化細菌の存在が示唆された。八郎潟干拓地土壌では、30 mのコア試料を用いて深度別の脱窒能と堆積物の理化学性、微生物の群集構造を測定し、1.6から5 mおよび10.5 m付近にチオ硫酸添加処理において炭素添加処理を上回る脱窒能のピークが認められ、還元型硫黄を電子供与体とする脱窒のシグナルを検出した。微生物組成の解析の結果、下層では硫黄酸化細菌が優占し、脱窒能の高かった深度には脱窒能力を持つ細菌も検出され、土壌の脱窒能と細菌の組成が良く一致した。大潟村干拓地下層では、微生物を介した硫黄循環と窒素循環の密接なリンクが示唆され、窒素の負荷された農耕地土壌では硫黄脱窒の相対的な寄与が大きいと推察された。
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