研究概要 |
疎水的有機化学物質の土壌中の存在形態の解明に対する基礎的知見を得、今後の研究の発展に繋げることを目的として研究を行った。 ディルドリンの土壌への吸着は、24時間で平衡に達し、96時間目まで吸着量に変化は見られなかった。無処理土壌へのKd値は、50,000 (Kg L-1)で、極めて吸着性が高いことが示された。 疎水性有機化学物質のディルドリンの各腐植(フミン酸、フルボ酸、ヒューミン)への吸着の親和性は、それぞれの腐植によて異なるのではないかと考え実験を行った。各腐植物質へのディルドリンの吸着強度は、ヒューミン>フミン酸>無処理土壌>フルボ酸の順となった。従来、農薬などの有機化学物質の土壌吸着は、土壌中に存在する腐植などの有機物質を一様の性質をもつものと捉えて解析される。しかし、本研究の結果は、腐植物質の種類によりディルドリンの吸着性が異なることを示し、中でも最も水溶性の高いフルボ酸が低い吸着性持つことを示した。今後、農薬などの有機化学物質の土壌吸着を調べる際には、腐植の官能基特性などと関連付けて調べていく必要があると考えられる。 また、ヒューミン+フルボ酸+無機成分試料への吸着は、ヒューミン+無機成分にディルドリンを吸着させた後にフルボ酸を添加した実験の方が、ディルドリンとフルボ酸を同時添加した実験よりも吸着性が高くなった。さらに、時間差で添加した試料とヒューミン+無機成分の吸着傾向が似ていた。これは、無機成分とヒューミンを混合したものにフルボ酸とディルドリンを同時添加すると、フルボ酸の疎水的な部分がヒューミンの疎水的な部分に吸着し、親水的な部分が溶液側を向くことによりディルドリンの吸着が阻害されている可能性を示唆していた。同時に、一旦ヒューミンに吸着したディルドリンはフルボ酸によって容易に脱着しない可能性が示唆された。 現在、上記の結果の裏付けを得るべく、さらに研究を進めている。
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