研究課題
肥満や動脈硬化といった病態は、様々な細胞が絡み合って起こる現象であって単一の細胞実験で十分に解析する事は難しい。われわれは、CerK欠損マウスを保有する強みを生かし、in vivoの実験系と細胞レベルの実験系の両方を行い、CerKのマクロファージ細胞機能と、それらが関与する肥満や動脈硬化といった病態での機能に迫りたいと考えている。本年度は、CerK欠損マウスの食餌誘導性肥満への影響を検証した。CerK欠損マウスに高脂肪食(60% fat)を4週齢から15週齢まで与えるdiet-induced obesity (DIO)試験を行った。その結果、CerK欠損マウスでは、高脂肪食による体重増加が強く抑えられていた。興味深い事に、CerK欠損マウスでは、脂肪組織でのTNFα、IL-6等の炎症性サイトカインの発現量増加も強く抑えられており、肥満による脂肪組織での炎症が全般的に抑えられていた。脂肪組織から抽出したmRNAを用いて、様々な分子の発現変動を追った所、マクロファージのマーカーであるF4/80がCerK欠損マウスで低い事が解った。実際に脂肪組織に侵入したマクロファージの数をカウントした結果、CerK欠損マウスでは、脂肪組織へのマクロファージの浸潤が強く抑えられている事が解った。脂肪組織中の脂肪細胞のサイズを計測すると、CerK欠損マウスでは、脂肪細胞の肥大化も強く抑えられていた。つまり、CerK欠損マウスでは、高脂肪食投与による脂肪細胞の肥大化と、その後の炎症反応、マクロファージの浸潤等、肥満が引き起こす炎症増悪の悪循環が強く抑えられていた。次年度は、これらの現象に関わるシグナル伝達のどの部分にCerKが関与するのかを細胞レベルで明らかにしたい。
1: 当初の計画以上に進展している
われわれは、CerK欠損マウスを保有する強みを生かし、in vivoの実験系と細胞レベルの実験系の両方を行い、CerKのマクロファージ細胞機能と、それらが関与する肥満や動脈硬化といった病態での機能に迫りたいと考えている。本年度は、特に食餌誘導性肥満とCerKの関係を動物レベルで検証する事を当初の目的としていた。この目標を予定どおり終了したので(1)とした。
本研究課題では、CerKとマクロファージの機能に着目し、マウスを用いた個体レベルの病態解析と、単離した細胞を用いてその分子メカニズムの解明を目指す。本年度は、マウスの個体レベルの実験を行った。これらの結果を基に、次年度は細胞レベルの実験を行いCerKのマクロファージ細胞での役割の全容解明を目指したい。これらの研究は当初の予定通りである。
今年度は、当初の予定以上に順調に実験が進み、予想されていた問題点も容易に解決した。よって、当初の予定から未使用額が発生した。次年度はこれら未使用額と次年度予算を併せて、細胞レベルの実験を充実させる為に、細胞培養関連試薬、分子生物学関連、脂質生物学関連の試薬を中心に研究費を使用する。また、これらの実験に必要な備品が生じた場合は、備品の購入も行う。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 286 ページ: 28544-28555
巻: 286 ページ: 41669-41679
10.1074/jbc.M111.301796
Lipids in Health and Disease
巻: 10 ページ: 150
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