研究概要 |
ロンボイドプロテアーゼ (ロンボイド)は、近年同定された膜内セリンプロテアーゼであり、膜タンパク質の膜貫通領域を切断する。原核生物からヒトまで保存され、多様な機能が報告されつつある。しかし、ゴルジ体膜で機能するロンボイドが解析されているのはショウジョウバエのみであり、真核微生物においても報告はない。本研究ではゴルジ体膜に局在するロンボイドの役割を解明するため分裂酵母を用いて基質同定を目的とした。 単離した破壊株 (rob1Δ, rob2Δ)は様々な表現型を示した。Rob1は亜鉛・コバルトの恒常性や、ゴルジ体における液胞タンパク質の選別輸送、液胞融合、コロニー凝集性維持などの過程に関与している事が分かってきた。現在、rob2Δ株においても特定の抗生剤に対する感受性が出たため、両破壊株はゴルジ体において異なる機能を有する事が分かってきた。また、Rob1に保存されている様々なアミノ酸に変異導入した結果、活性中心のSer、基質認識に関わるHisなどが保存されている事が分かった。現在、明確なモチーフが無いRob2にも基質認識に関与しているヒスチジンを推定し解析を行なっている。 近年、大腸菌ロンボイドの基質には、特徴のある配列が存在する事が報告された。ゲノム中で本配列を有する24個の一回膜貫通タンパク質の切断有無を調べた結果、変化は無かった。複数回膜貫通タンパク質も調べている中、rob1Δ株のみで2回膜貫通タンパク質の膜結合型転写因子Sre2のゴルジ体膜から核への移行遅延が見られた。Sre2の切断推定箇所に変異導入を行った結果、P1位に変異導入したものが核局在を示さなかった。また、ウェスタンブロッティングにより、Sre2のP1位における切断にRob1が関与している事が明らかになった。機能未知なSre2の解析だけでなく、作製出来た人工基質により、切断機構の詳細が明らかになろうとしている。
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