本研究は、現在までに同定されている植物の二種のキチンオリゴ糖エリシター受容体タンパク質の細胞外ドメインであるLysMドメインおよびクラスVキチナーゼ型ドメインと、キチンオリゴ糖との結合様式の決定を目的としている。また、両タンパク質のオリゴ糖結合前後での立体構造変化に注目し、オリゴ糖受容の情報が細胞内に伝達される仕組みの解明を試みるものである。平成23年度までにLysMドメインをキチン結合ドメインおよびインテインとの融合タンパク質として発現させると、発現タンパク質の50%程度が可溶性タンパク質として発現されること、on columnでのプロテインスプライシングにより、電気泳動的に均一なまでに精製できることを見い出した。また、予備実験においてチオレドキシンとLysMドメインの融合タンパク質とキチンビーズとの結合実験を行った結果、N末端側から2番目のLysMドメイン(LysM2)のみが、キチンと比較的強く結合することがわかった。15N安定同位体でラベルしたLysM2を作製し、1H-15NHSQCNMRスペクトルを測定した。キチンオリゴ糖6糖を用いて滴定実験を行ったところ、幾つかのシグナルにおいて滴定に伴う化学シフトの変化が見られた。クラスVキチナーゼ型ドメインについては、チオレドキシンとの融合タンパク質として発現させた。Niカラムクロマトグラフィーによる精製後、尿素およびアルギニン塩酸塩を含む溶液を用いて透析を行ったところ、一部立体構造のリフォールディングがみられた。現在これらの成果のデータを基に投稿論文を作製するために、さらに実験データの蓄積を行っている。
|