研究課題/領域番号 |
23790001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
穴田 仁洋 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (90344473)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 不斉触媒反応 / ロジウム(II)錯体 / α-アルキル-α-ジアゾエステル / シクロプロペン化反応 / フェニルアセチレン / カルベン / シクロプロパン / DFT計算 |
研究概要 |
α-アルキル-α-ジアゾエステルとアルキンとの不斉シクロプロペン化反応の開発について検討を行い、本年度は以下の知見を得ることができた。1. 種々の置換様式をもつα-アルキル-α-ジアゾエステルを用いた不斉シクロプロペン化反応を検討したところ、Rh2(S-TBPTTL)4を触媒に用い、エステル部分をかさ高い2,4-ジメチル-3-ペンチルエステルとすることが高い不斉収率の獲得およびアルケン副生の抑制に必須であることが分かった。本反応はベンゼン環上に様々な置換基を持つフェニルアセチレン誘導体が基質として適用可能であり、いずれの場合もシクロプロペン誘導体を極めて高い不斉収率で得ることができた。これらの結果は、α-アルキル-α-ジアゾエステルとアルキンとの不斉シクロプロペン化反応の最初の例となる。2. X線結晶構造解析により明らかとなったRh2(S-TBPTTL)4のC4対称型の不斉反応場とRh2(O2CH)4を用いたα-ジアゾプロピオン酸メチルとフェニルアセチレンとのシクロプロペン化反応のDFT計算の結果を基に本反応の立体反応経路について考察を行った。α-ジアゾエステルはRh2(S-TBPTTL)4との反応により窒素の放出を経て、カルボニル基の炭素原子がロジウム-酸素結合に対してエクリプス配座となり、エステルのカルボニル基がロジウム-カルベン炭素結合に対して垂直にねじれ、かつかさ高い2,4-ジメチル-3-ペンチル基がテトラブロモフタルイミド基との立体反発を避けるように空いた空間を占めたロジウム(II)カルベン中間体を形成する。アルキンはエステルのアルコキシ基方向(Re面)からカルボニル基との静電反発を避けるように、フェニル基をアルキル基側に約30°傾けながらend-on型で接近することにより、実験結果に合致する配置のシクロプロペン誘導体が生成することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rh2(S-TBPTTL)4のX線結晶構造解析を行い、α-アルキル-α-ジアゾエステルとアルキンとのシクロプロペン化反応の立体反応経路を考察することができた。これにより、かさ高い2,4-ジメチル-3-ペンチルエステル部分が不斉誘起のみならずアルキン副生の抑制に重要な役割を果たしていることを説明することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は基質適用範囲の拡張を目指し、種々のアリールアセチレンの他、プロパルギルエーテル誘導体、プロパルギルアミン誘導体等の種々の末端アルキン、内部アルキンを用いた不斉シクロプロペン化反応を検討する。また、本反応の応用研究として、不斉シクロプロペン化反応を鍵工程とする生物活性物質の触媒的不斉合成を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は昨年に引き続き、実験の遂行に必要不可欠な試薬類、各種溶媒、実験用ガラス器具及び参考書籍の購入に充てる。旅費は学会発表や研究打合せへの参加費用ならびに航空運賃、参加期間中の宿泊費に充てる。その他に関しては、スペクトル依頼測定料(NMRの特殊測定・質量分析・元素分析)、英文校閲料、論文投稿料・別刷費に充てる。なお、平成23年度の研究において経費の節減の結果生じた使用残については、不斉シクロプロペン化反応を鍵工程とする生物活性物質の触媒的不斉合成における試薬類の購入に使用する予定である。
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