研究課題/領域番号 |
23790002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
稲本 浄文 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30359533)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 触媒・化学プロセス / 有機化学 / パラジウム / C-H 官能基化 / 複素環化合物 |
研究概要 |
申請者はこれまで,パラジウム触媒による炭素-水素結合 (C-H) 官能基化を経由する炭素-ヘテロ原子 (窒素原子,硫黄原子) 結合形成プロセスを特に分子内反応へと適用した,新規縮合複素環化合物構築法の開発に取り組み,成果を挙げてきた.その中の 1 つに,3,3-ジアリールアクリルアミド類の C-H アミド化を経由した閉環反応による 2-キノリノン類合成法がある (J. Org. Chem. 2010, 75, 3900).一方で,連続する 2 つ以上の反応を 1 つの反応容器で一挙に行う手法,いわゆるタンデム型・ワンポットプロセスは,小分子の出発物質から複雑な骨格を有する生成物をより迅速に供給できるため,効率性や環境調和性の観点から非常に魅力的な手法である.今回申請者は,「けい皮酸アミド類のアリールボロン化合物との酸化的 Heck 反応」と「分子内 C-H アミド化」という,いずれも 2 価のパラジウムにより触媒されるプロセスをワンポットで行うことで,より効率的な 2-キノリノン化合物合成法が確立できるのではないかと考え,検討を行った.広範な反応条件スクリーニングの結果,10 mol% のパラジウム触媒と再酸化剤である 1 等量の銅塩に加え,8 等量の銀塩が系内に存在している条件にて,所望の上記タンデム型プロセスが円滑に進行することが明らかとなった.ここで銀塩は再酸化剤として機能しており,これを大過剰量用いることで,出発物質の分解を抑制し,触媒サイクル中のパラジウムの再酸化を促進していると考えられる.本プロセスにおいては,メトキシ基やメトキシカルボニル基,ハロゲン原子といった種々の置換基が共存可能であり,非常に効率的かつ実用的な新規 2-キノリノン類構築法を開発できたと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」の項で記載したように,当初応用的研究として位置づけていた「タンデム型プロセスによる複素環構築」のひとつとして, 2-キノリノン化合物合成法を確立した一方,基礎的検討項目であった「芳香環 C(sp2)-H 官能基化による縮合複素環合成を広範に行い,その適用範囲を明らかにする」という目的は充分に達成されていない.今後さらに継続した基礎的及び応用的研究が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
芳香環 C(sp2)-H 官能基化による複素環合成を広範な出発物質を用いて行い,本アプローチの適用範囲を見出し,体系化する.特に,これまで実現していない炭素-酸素結合 (C-O) 形成を利用した,ベンズイソキサゾール,ベンズオキサゾール,ベンゾフラン化合物といった含酸素複素環合成を重点的に検討する.さらに応用的研究として,前述のタンデム型ワンポットプロセスの開発をさらに推し進めるとともに,C(sp3)-H 官能基化によるヒドロキノリン類やチアデカリン類合成も試み,多様な新規分子変換プロセスの開発を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことにより発生した未使用額であり,平成24年度請求額とあわせ,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である.研究費の大半は,有機溶媒や金属触媒を含む試薬類の購入に使用する予定である.また一部は,研究により得られた成果の発表を行うための学会参加費およびそのための旅費に充当する予定である.
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