研究課題/領域番号 |
23790006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾谷 優子 東京大学, 薬学系研究科(研究院), 助教 (60451853)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | βーアミノ酸 / 二環性骨格 / オリゴマー / ヘリックス / チオアミド / 分子動力学計算 / 非天然アミノ酸 / 規則構造 |
研究概要 |
本研究では、水中で、短鎖ペプチドにて安定な規則構造をとるアミド・チオアミド連結オリゴマーの創製を目的として、二環性骨格を有するβ-アミノ酸の合成を行った。二環性骨格の橋頭位への置換基導入により、アミド結合のシス-トランス平衡を一方に偏らせ、安定な規則構造を構築することを狙いとした。(1)堅牢なトランス型アミドヘリックス構造の創製:近年当研究者らは4位置換アミノ酸ペプチドを合成し、これが水中でシスアミド型構造をとることを明らかにした。本研究課題では、トランスアミド型構造の創製を目的として、本二環性骨格の2個の橋頭位のうち片方の1位に置換基を導入したアミノ酸の合成を行った。合計19ステップで、目的とする、キラルな1位置換β―アミノ酸の合成を達成した。NMR解析の結果、本アミノ酸の2量体ペプチドはトランスアミド型構造を選択的にとることが分かった。(2) 二環性ペプチドのチオペプチド化の検討:オリゴマーの連結単位をアミド結合からチオアミド結合に変換することで、シス-トランス平衡の移動による構造変化を期待し、本研究を開始した。今までに合成法が確立されているシスアミド型二環性β―アミノ酸をチオアミド基で連結したチオペプチドの合成を試みた。まず、アミドペプチドを合成しLawesson試薬およびその類似試薬を用いてアミドからチオアミドへの変換を試みたが、橋頭位置換基の存在による立体障害により、目的物は得られなかった。次に、単量体アミノ酸をチオカルボン酸誘導体に変換し、これを活性化してもう一方の単量体と連結する種々の手法を試みたが、チオカルボン酸誘導体の不安定性、または連結反応の際の立体障害により目的物は得られなかった。今後さらに検討を行う予定である。(3)分子動力学計算による規則構造構築メカニズムの解明:非天然アミノ酸の分子動力学計算に必要なパラメータや計算条件を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の当初の計画内容である、トランスアミド型ヘリックスの創製に必要なオリゴマーの合成、チオアミドの合成研究および分子動力学計算はすでに検討しており、24年度の研究に必要な基礎検討は終了した。また、上記の研究実績には記載されていないが、二環性骨格を持つニトロソアミンの光照射による一酸化窒素放出研究も展開中である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)堅牢なトランス型アミドヘリックス構造の創製:引き続きトランスアミド型ヘリックスの創製を目的にオリゴマー合成を行い、結晶中および溶液中の構造解析を行う。(2)シスアミド型ヘリックスの詳細な溶液構造の調査:分子動力学計算を用いた検討などから、シスアミド型のオリゴマーは4量体までNMR解析されているが、より長鎖のオリゴマーに関してもその溶液構造を実験的に詳細に見積もる必要性を認識した。アミド結合のシストランス異性化を制御した堅牢な規則構造は、長さ(距離)のはっきりしたスペーサー、すなわち「molecular ruler」としての応用が期待できる。現在molecular rulerとして応用されているプロリンオリゴマーよりも、より溶液中での構造変化が少なく、距離に信頼性があることが期待される。具体的には、閉環メタセシス反応を用いて互いに近くにある残基を同定することにより、ヘリックスのピッチや1ターンに要する残基数を調べる。(3)分子動力学計算による規則構造構築メカニズムの解明:引き続き分子動力学計算を用いた二環性オリゴマーの計算を行い、鎖長依存的な規則構造の誘起現象の解明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記計画の遂行のために、合成に必要な試薬およびガラス器具を随時購入する。また、学会での研究成果発表の際の旅費として使用する。
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