現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者は、目的実現に向けての道程を3段階戦略の形で設定し、今年度は主に(1)「穏和な条件下に脱水素型クロスカップリング(CDC)反応を進行させる、人工触媒の設計概念を確立する」の実現に取り組んできた。とりわけ元素戦略的に有利な第一列遷移金属(銅、鉄、コバルト、マンガンなど)を触媒として用いる、酸化的炭素骨格構築法の開拓を念頭に置いた。今年度の代表的成果としては、「銅触媒-過酸系を用いる、エーテル/アミンおよびニトロンとの新規CDC反応」が挙げられる。室温、ほぼ中性pHという温和な条件下に、エーテル/アミンα位のC-H活性化によってカチオン性中間体を生成させ、これにニトロンが求核剤として反応し炭素-炭素結合を形成するという、過去に類を見ない結合形成が実現された。またラジカルクロック実験などにより、2種の直交型一電子酸化剤が協奏的にエーテル/アミンの酸化を行うことで2電子酸化を実現するという、全く新規な反応機構で進行することも突き止めることもできた。本反応は非天然型α-アミノ酸を短工程で与える形式であり、(2)「触媒的CDC反応を応用し、医薬的に魅力ある合成単位を幅広く供給可能とする」に寄与する基盤方法論の一つにもなりうる成果である。以上の成果は、代表者をCorresponding Authorとする原著論文および解説論文として公表することができた (Hashizume, Oisaki*, Kanai* 著、Org. Lett. 2011, 13, 4288.; Chem. Rec. 2011, 11, 236. )。またこれと並行して、複数の別アプローチから(1)(2)の達成に向けて取り組んできており、こちらも原著論文として投稿可能な成果をいくつか見出すことに成功している。以上から、目標達成に向けた研究進捗は概ね良好であると評価している。
|