研究概要 |
前年度で開発したフタロシアニン鉄と分子状酸素を活用する以下の3つの反応について、主に適用範囲の試験やその応用について研究を行った。 (1)ヒドラジン化合物を用いたラジカル反応:カルボン酸ヒドラジドやセミカルバジド誘導体をラジカル前駆体とした炭素-炭素結合形成反応について、各種条件を検討したが収率を向上させることは今のところ達成できていない。したがって、スルホニルヒドラジドおよびホスホニルヒドラジドを用いたヘテロ原子-炭素結合反応について、ラジカル受容体となるアルケンの適用範囲を調べた。脂肪族アルケンでは収率が中程度にとどまることが多かったものの、他のスチレン型アルケンやMichael アクセプターと首尾よく反応が進行することがわかった。また、本研究の過程で見出された酸化的ニトロ化反応についても詳細に適用範囲を検討した。 (2)単純アルケンからのC-H酸化を経る1,4-ジオールの合成:フタロシアニン鉄の配位子の効果を詳細に検討して収率を向上させることに成功し、さまざまなアルケンに対して酸素存在下、触媒量のフタロシアニン鉄と水素化ホウ素ナトリウムで処理することにより、1,4-ジオール合成の適用範囲を試験した。いくぶんの制限があったものの、1級、2級および3級の水酸基を含む1,4-ジオール体を中程度の収率で与えることが明らかになった。また(1)で見出した酸化的ニトロ化反応を同様のC-H直接酸化へ応用することにより、ニトロ基を導入とともに1,4-ジオール誘導体へと一挙に導くことにも成功した。 (3)酸素を酸化剤とする酸化還元縮合反応:速度論解析によって反応機構の解析を行った。その結果、反応を促進するピリジンN-オキシド類はフタロシアニン鉄の配位子として働いていることや重要中間体としてホスフィンカチオンラジカルが生成していることなどが示唆された。また触媒的光延反応への応用も検討された。
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