研究課題/領域番号 |
23790009
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山田 耕平 金沢大学, 薬学系, 助教 (40583232)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ベンジル化 / ベンジル化剤 / アルキル化 / 保護基 / トリアジン / 反応剤 |
研究概要 |
ヒドロキシ基の保護基として、ベンジル基はその堅牢性と脱保護の簡便性から、有機合成において多用されている。ベンジル化反応を行うための主な方法として1)臭化ベンジルに対するアルカリ金属アルコキシドのSN2反応(Williamsonエーテル合成法)と2)トリフルオロメタンスルホン酸などの強酸によって触媒されるベンジルトリクロロアセトイミダートを用いたベンジル化反応がある。これらの条件においては強塩基や強酸を必要とするため、酸や塩基に対して不安定な構造を有する化合物への適用は制限される。そのため、温和な反応条件下で進行するベンジル化剤の開発が望まれている。我々は強酸・強塩基を用いずに反応が進行するベンジル化剤の開発を目的に研究を行うこととした。以上の目的の為に研究を行ない、以下の進展がみられた。(1)ベンジル化剤の構造の最適化を行い、溶解性、反応性の向上がみられた。(2)溶媒、塩基、濃度などの反応条件の精査を行なった。ジメトキシエタン中、反応の進行に伴って生じるトリフルオロメタンスルホン酸の中和のための酸化マグネシウム存在下、室温にてベンジル化は二時間で進行し、モデル基質のベンジルエーテル体を良好な収率(96%)で得られることがわかった。(3)様々な基質に本反応を適用したところ、どれも良好な収率で反応は進行した。特に、従来法では基質の損壊や副反応の懸念があるアセトキシ基やβヒドロキシエステル等の脆弱な官能基を有する化合物においても問題なく反応は進行し、目的物を良好な収率で得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最大の山場であるベンジル化剤の構造最適化、及び水酸基のベンジル化反応条件の最適化が完了したことから、順調に研究は進展していると考えている。また、様々な官能基に対するベンジル化や、反応機構の解明に関しても順調に研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
水酸基のベンジル化がうまくいったことから、この反応機構に関して研究を行なう。また、様々な官能基のベンジル化を試みる。特に温和な条件下での芳香環に対するFriedel-Crafts反応や、アミドからベンジルエステルへの変換反応等、従来では達成困難な反応に挑戦する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に試薬・消耗品の購入に使用する。また、水酸基のベンジル化に関しては研究がまとまってきているので、学会発表や論文の執筆を行なう。この為の学会参加費・旅費、及び文章校正費に使用する。繰越金が生じた理由は、もっと高価な試薬が必要となる予定だったが、様々な実験と新しい知見を得たことで、それらの試薬を使用せずとも、よい試薬の開発が可能となったためである。また、必要な機器を購入する予定であったが、価格や製品スペックの比較、見積もりなどを行っているうちに、年度が過ぎてしまったためである。繰越金のうち、試薬購入分は他の試薬の購入にあて、開発した試薬の知見を更に広げることに用いる。機器購入に関しては、現在見積もり中であるので、今年度中には購入予定である。
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