研究課題/領域番号 |
23790014
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森本 浩之 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20593867)
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キーワード | 炭素ー水素結合活性化 / 遷移金属触媒 / 不斉反応 / アルキニル化 / 環境調和型反応 / アミノ酸誘導体 / 不斉四置換炭素構築 |
研究概要 |
本研究は、非活性化型炭素-水素結合の直接的求核的活性化を活用した(1)アルキン及び(2)電子不足型芳香族化合物の触媒的不斉付加反応の開発、及び(3)その各種生理活性物質合成への応用を目的とする。このうち、平成24年度は(1)アルキンの直接的触媒的不斉付加反応の開発において、典型元素添加による求電子剤活性化の検討を行うこと、及び(2)電子不足型芳香族化合物の触媒的不斉付加反応の予備的検討を行い、本反応が進行可能であることを確認することを目標とした。 本年度の検討の結果、以下の内容が明らかとなった。まず、(1)については、トリフルオロピルビン酸由来のイミンに対して種々条件検討を行った結果、通常は困難な四置換炭素構築型直接的触媒的不斉アルキニル化反応の開発に成功した。本反応は室温下またはそれ以下の温度で容易に進行し、プロトン移動のみで目的のアルキニル化体を高い収率及びエナンチオ選択性で与えた。これはイミンに対する四置換炭素構築型直接的触媒的不斉アルキニル化反応の数少ない成功例として非常に意義深い。また、本生成物は(3)の生理活性物質合成における四置換炭素含有アミノ酸誘導体であり、変換反応によりαトリフルオロメチルサリドマイドの短工程高収率合成にも成功した。一方、生理活性物質合成に有用なイサチン由来のケトイミンや、より求電子性の低いベンゾイルギ酸誘導体でも、反応性に改善の余地を残すものの良好な立体選択性にて生成物が得られることを見いだし、典型元素触媒添加による求電子剤活性化を含めた種々の検討を行っている。なお、(2)については、現在までに満足のいく結果を得られていないが、(1)の反応機構解明を行う事で、芳香族化合物の炭素―水素結合をも活性化できる反応系の開拓を行い、反応が進行する触媒系の確立を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、非活性化型炭素-水素結合の直接的求核的活性化を活用した(1)アルキン及び(2)電子不足型芳香族化合物の触媒的不斉付加反応の開発、及び(3)その各種生理活性物質合成への応用を目的として研究を行っている。 このうち、(1)のアルキンの触媒的不斉付加反応の開発については、現在までにトリフルオロピルビン酸由来のイミンについて、目的のアルキニル化体を高い収率及びエナンチオ選択性にて得る事に成功している。本反応は0℃から室温の温和な条件下プロトン移動のみで進行し、酸・塩基性条件に不安定な官能基を含む幅広い基質に対して適用可能である。さらに、生理活性物質合成に有用なイサチン由来のケトイミン類や求電子性の低いベンゾイルギ酸誘導体についても、反応が進行する事を確認している。 また、(3)については、(1)で得られた生成物の変換により、種々の四置換炭素含有αアミノ酸誘導体の合成に成功している。特に、本手法を用いる事で既知の化合物から4段階、44%収率にてαトリフルオロメチルサリドマイドの合成に成功したのは特筆すべき成果である。 一方、(2)については、現在までに満足のいく結果を得られていないものの、(1)の検討から芳香族化合物の炭素―水素結合を活性化できる条件が示唆された事から、今後の検討によって目的の反応を進行させる事が可能と考える。 以上の結果より、現在までの達成度はおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、(1)前年度の検討を継続して行い、特に生理活性物質合成に有用なイサチン由来のケトイミン類や求電子性の低いベンゾイルギ酸誘導体において、典型元素触媒添加による反応性及び立体選択性の向上を目指す。また、反応中間体の単離(2)触媒的不斉付加反応において、芳香族化合物の炭素―水素結合の活性化を指向した種々のカルボン酸アニオンを有する遷移金属触媒を検討し、反応が進行する触媒系の確立を目指す。その後、収率の向上及び不斉反応への応用を試みる。また、必要に応じて典型元素触媒の添加を行い、反応性及び選択性の向上を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究計画を遂行するにあたり、研究用試薬(触媒として用いる遷移金属・典型金属、配位子及び化合物合成用試薬)、精製用の有機溶媒、ガラス器具が研究に必須であり、消耗品費として申請する。 さらに、研究の進展に必要な最新の情報を得るため、及び自らの研究結果の発表のために各種学会への参加が必要であり、そのための旅費を各年度に申請する。 また、前年度において使用する予定であった研究費の繰り越し分は、主に反応機構解析に必要な種々の金属触媒前駆体及び配位子を合成する上で必要な試薬を購入するために使用する予定である。
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