研究課題/領域番号 |
23790016
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
小西 英之 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (20565618)
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キーワード | ボロン酸 / 共有結合 / 触媒 / 基質認識 |
研究概要 |
ボロン酸を含む新規配位子として、BOX型配位子およびsalen型配位子の合成検討を行った。また、これまでに合成した含ボロン酸配位子をルイス酸と組み合わせて用い、ピルビン酸誘導体とヒドロキシ基含有芳香族化合物のFriedel-Crafts反応およびα-ケトエステルとエノールエーテルのDiels-Alder反応についての検討を行った。その結果、反応が進行することは確認できたが、再現性に問題があることがわかり、現在これを解決するための検討を行っている。 上記検討と並行して、共有結合を介する触媒反応として、ボロン酸エステルの交換反応の代わりにカルボン酸エステルの交換反応を用いる手法についても検討を行った。ギ酸エステルを用いるアルケンのRu触媒ヒドロエステル化反応は、2-ピリジルメチルエステルを用いた場合にのみ反応が進行することが他グループにより報告されていた。この反応において、触媒量の2-ピリジルメタノールを添加することにより、種々のギ酸エステルがヒドロエステル化反応に適用可能となることを見出した。さらなる条件検討の結果、2-ヒドロキシメチルイミダゾール類が最適なアルコールであることを見出し、ギ酸エステルおよびアルケンの基質適用範囲を大幅に広げることに成功した。 Ru触媒的ヒドロエステル化反応の検討途中で、芳香族ギ酸エステルが第三級アミンなどの弱塩基と混合するのみで一酸化炭素(CO)とフェノール類に分解することを発見した。この現象を利用し、ボンベ由来のCOガスを用いない芳香族ハライドのPd触媒的カルボニル化反応の検討を行った結果、高収率で目的物が得られることを見出した。本反応は基質一般性に優れ、通常のカップリング反応において低反応性のトシラートに対しても進行すること、電子求引性置換基を導入したギ酸エステルを用いることで、室温という温和な条件下においても本反応が進行することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
含ボロン酸新規配位子の合成法については、研究計画通りほぼ確立することができた。だが、それを金属と組み合わせて触媒として用いる有機合成反応の開発において、系中で生成した錯体の溶解度の低さに起因すると思われる再現性の問題が予期せぬ障害となっているため、本研究全体としては計画からやや遅れているのが現状である。 しかし、本年度は本研究より派生した研究であり、共有結合の切断と生成を伴う反応である、カルボン酸エステルの交換反応を用いる触媒的ヒドロエステル化反応の開発研究が順調に進んだ。さらに、そこで得られた知見をもとに、外部からのCOガスを全く用いず、高い実用性と安全性を併せ持つ触媒的カルボニル化反応を開発することができた。このように、当初の予想とは全く違った形で本研究課題より派生した研究を大きく進展させることができ、4報の論文執筆ができたため、個人で行う研究全体としては計画以上に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、含ボロン酸配位子と金属を組み合わせた触媒を用い、有機合成反応における新規配位子の有用性(反応速度の向上、位置や立体選択性の変化等)を見出す検討を続けていく予定である。現在検討を行っているFriedel-Crafts反応やDiels-Alder反応をモデル反応として今後も検討を続けるが、Michael付加反応など、配位子の有用性の評価が可能であると考えられる他の有機合成反応を用いる検討を行う。 万が一、金属-含ボロン酸配位子の組み合わせを用いての研究成果が上がらないようであれば、ルイス酸の使用をやめて含ボロン酸配位子自体をルイス塩基触媒として利用できるような反応を用い、共有結合を介するボロン酸有機触媒としての利用の可能性を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は有機化学実験が中心であり、次年度も平成24年度と同様に研究室内または大学内の既存の施設を用いて研究の遂行が可能である。したがって、次年度の研究費の主な使用目的は、研究に必要な試薬や溶媒、その他消耗品類にかかる経費である。また、研究成果発表のための学会参加費用(旅費を含む)や、論文作成における英文校閲費用、論文の投稿にかかる費用として研究費を使用する計画である。
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