研究概要 |
近年、結核症はわが国でも増加傾向にあり、その治療と予防対策は重要な課題である。中でも多剤耐性結核菌に対抗できる新規薬剤の開発が期待されている。本研究では微生物二次代謝産物から発見された新規抗結核活性物質カルピナクタムをリード化合物として取り上げ、その構造活性相関研究からより活性の高い化合物を創製する。また、ケミカルプローブを用いてカルピナクタムの標的分子を解明する。以上の研究により、新しい作用メカニズムと新規骨格を有する抗結核薬の開発の分子基盤を創製することを目的とした。 カルピナクタムの立体化学が抗結核活性に重要な役割を果たしているかを確認するため、構成アミノ酸の立体配置を1つずつ反転させた誘導体を合成した。2-クロロトリチルクロリドレジンを固相担体に用いてFmoc-アミノ酸を担持させた後、目的の鎖状ペプチドが得られるまでFmoc基の脱保護(2% DBU/DMF)とFmoc-アミノ酸の縮合(PyBop, DIPEA, DCM/DMF)を繰り返した。続いてN末端にBoc-アミノ酸を縮合させた後、Boc, Trt, t-Bu基に影響しない酸性条件で鎖状ペプチドを固相担体から脱離させた(25% HFIP/DCM)。液相で鎖状ペプチドとアミノカプロラクタムの縮合後(HATU, DIPEA, DMF)、全ての保護基を除去(TFA, TIPS, H2O)してカルピナクタム誘導体を合成した。また、各誘導体の収率は37~82%と高いため、セーフティーキャッチリンカーを用いた合成検討は中止した。 誘導体の抗結核菌活性を評価した結果、全ての誘導体が活性を消失した。このことからカルピナクタムの立体化学は抗結核活性を示すために必須であることを明らかにできた。
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