申請者はカルピナクタムをリードとした新しい抗結核剤の開発を目指し、以下の3点を検討した。1)固相合成法を利用した非天然型カルピナクタム誘導体の合成ー新たにカルピナクタムの固相合成法を確立した。その手法を用いて、アラニン置換体6種、立体異性体6種、C末誘導体2種、N末誘導体4種を合成した。総収率は37-95%であり、第一世代の液相合成法(カルピナクタムの収率は6%)と比較して本手法は収率をかなり改善することができた。2)カルピナクタムの構造活性相関ー合成誘導体のMycobacterium smegmatisに対する抗結核菌活性評価の結果、カルピナクタムのMICは0.78 μg/mLであるのに対し、D-Glu残基のD-Ala置換体のみが中程度の活性を示し(6.25 μg/mL)、他の全ての誘導体は抗結核菌活性を消失した。このことから各アミノ酸残基の側鎖と立体化学は活性に必須であり、さらにペプチド鎖全体の長さも活性に重要であることを明らかにできた。3)カルピナクタムの標的分子を解明するためのケミカルプローブの作成ー活性が保持されたD-Glu残基のD-Ala置換体に着目し、D-Gluのカルボン酸を足掛かりにビオチンタグの導入を検討した。固相合成法を用いて中間体を調整し、リンカーを介してビオチンを導入し、目的のビオチン誘導体を合成した。様々な溶媒に対して難溶性を示したため、現在は溶解性を向上させた誘導体を合成している。
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