研究課題/領域番号 |
23790025
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
李 巍 東邦大学, 薬学部, 准教授 (90328633)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 薬学 |
研究概要 |
本研究は新規糖尿病治療薬のシーズ化合物の発見を研究目標として、200 種の生薬ライブラリーを用いてプロテインチロシンホスファターゼ1B(PTP1B)阻害活性をスクリーニングした結果、中国伝統薬用植物血満草(Sambucus adnata)のメタノール抽出物は優れたPTP1B阻害活性示した。この抽出物について、詳細な化学成分研究を行い、新規トリテルペン化合物1種を含む計13種の化合物を単離し、各種スペクトル解析により構造解析を行った。新規化合物の構造は1alpha-3beta-dihydroxy-urs-12-en-11-one-3-yl palmitatene-3-yl palmitateと決定した。単離した化合物のうち、2種のトリテルペン化合物ursolic acidとoleanolic acid、および1種のネオリクナン化合物boehmenanは最も強いPTP1B阻害活性を示し、IC50値はそれぞれ4.1, 14.4 and 43.5 microMである。一方、酵素阻害速度論解析の結果、boehmenanはPTP1Bの競争型阻害剤である。Boehmenanはネオリクナン類PTP1B阻害剤として初めての報告例であり、今後、その誘導体の作成により新たな新規PTP1B阻害剤の創製が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は新規糖尿病治療薬のシーズ化合物の発見を研究目標として、伝承医薬に用いられている薬用植物からPTP1B阻害作用を有する化合物の探索、ケミカルバイオロジーの研究手法によりこれら化合物の構造活性相関と阻害作用機序を解明を研究目的とする。1年目の研究は200 種の生薬ライブラリーを用いたPTP1B阻害活性のスクリーニング、および優れたPTP1B阻害活性示した中国伝統薬用植物血満草(Sambucus adnata)のメタノール抽出物抽出物から3種のPTP1B阻害活性を有する天然化合物を発見できた。次年度は更なるPTP1B阻害活性示した薬用植物抽出物の成分研究を行う一方、今まで発見した活性成分について細胞試験においてその作用を詳しく調べる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は3つの方向で研究を推進する予定である。1、新しいPTP1B阻害活性成分の発見を目指して、血満草以外のPTP1B阻害活性示した薬用植物抽出物の成分研究を行う。2、既知PTP1B阻害活性成分の化学誘導体の作成を行い、構造活性相関の解析を行う。3、細胞実験を用いて、既知PTP1B阻害活性成分のインスリンシグナル伝達経路への影響を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は成分研究を中心に展開していた。当初1年目に想定していたPTP1B阻害活性成分の構造活性研究が行わなかったため、この分に計上した研究費は使用しなかった。これら研究は2年目から行う予定で、2年目に計画とおり使用する予定である。
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