研究課題
本研究は、メディシナルフラワー (薬用花) に着目し、抗老化関連物質の開拓を志向した探索研究を実施する。すなわち、食経験があるなど安全性が確立している薬用花を厳選・探索資源とし、抗老化関連物質を効率よく探索する。今年度は,日本などにおいて解毒薬などとして利用されているウメ (Prunus mume) の花部(白梅花)のエキスの生物活性評価を行ったところ,メラニン生成抑制およびアルドース還元酵素の阻害作用を見出した. そこで、中国産白梅花の活性成分の探索を行ったところ,15 種の新規ポリアシル化ショ糖 mumeose A-O, mumeic acid A を含む 3 種の新規アシル化キナ酸および 1 種の新規フラボノール配糖体 mumeflavonoside A を単離した.白梅花の主要成分であるアシル化キナ酸は,細胞毒性を示すことなく有意なメラニン生成抑制作用を示した.特に,5-O-(E)-feruloylquinic acid methyl ester は強いメラニン生成抑制作用を示すことが明らかになるとともに構造と活性に関する知見が得られた.この実験結果は,白梅花の伝承薬効の一つである美顔効果を支持すると考えられる.また,昨年度に引き続き,中国産および韓国産椿花の活性成分の探索を行ったところ,10種の新規オレアナン型トリテルペンサポニンsanchakasaponin A-H および camellioside E, F を見出すとともに,得られたsanchakasaponin 類に強いメラニン生成抑制活性を見出した.日本産椿花に含有される camellioside 類にも有意なメラニン生成抑制活性と細胞毒性が認められる一方で,繊維芽細胞増殖促進作用を示すことが明らかとなった.この細胞選択性は,皮膚疾患の治療薬の開発において重要であると考えられる.
2: おおむね順調に進展している
白梅花や椿花などの種々のメディシナルフラワー (薬用花) のエキスおよびトリテルペン配糖体,アシル化キナ酸誘導体などの含有成分に皮膚の老化の観点などにおいて重要だと考えられるメラニン生成抑制作用・繊維芽細胞増殖促進作用を見出すとともに、構造活性相関および一部の作用様式に関する知見を得る事ができた。特に,椿花から得られた camellioside 類が細胞選択性を示すことなど興味深い知見を明らかにすることができた.平成 24 年度の当初計画をほぼ達成したものと考える.
引き続き,甘茶の花部などを含めた種々のメディシナルフラワー (薬用花) から抗老化関連物質の探索を行うとともに,昨年度までに得られたアシル化キナ酸などの有望な成分については活性発現の必須構造など構造上の特徴と薬理活性との関連性を検討する.また,有望な成分の作用メカニズムの解明研究を行い,新しい抗老化関連物質および機能性素材の開発を目指す.
平成25年度は,有機溶媒,シリカゲル等の抽出分離用試薬,細胞培養用試薬,測定用試薬等のバイオアッセイ用試薬,フラスコ等のガラス器具,細胞培用プラスチック器具.マウス等の実験動物を購入する予定である.一方.本研究の実施に必要な設備.機器は既にそろっており.購入する予定はない.
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (14件)
Bioorg. Med. Chem
巻: 21 ページ: 779-787
10.1016/j.bmc.2012.11.038
Tetrahedron Lett
巻: 54 ページ: 32-34
10.1016/j.tetlet.2012.10.052
Chemical & pharmaceutical bulletin
巻: 61 ページ: 445-451
10.1248/cpb.c12-01068
Chem. Pharm. Bull
巻: 60 ページ: 1188-1194
10.1248/cpb.c12-00473
J. Nat. Prod
巻: 75 ページ: 1425-1430
10.1021/np3001078
巻: 60 ページ: 752-758
10.1248/cpb.60.752