研究概要 |
ミクロカプセルとは小さな容器であり、内包物質の保護や輸送といった機能を付与することが出来るため、医療、食品、工業などさまざまな分野で利用されている。さまざまなカプセル調製方法が考案されており、基本的にはどのような物質でもカプセル化することができるが、カプセルに用いる物質や内包する物質の性質に合った方法を適切に選択する必要がある。また、調製の際のコストやカプセルにどのような機能を付与したいのかを考慮する必要があるため簡便に行えて材料選択性の高いカプセル調製法が求められている。 そこで、本研究では粒子表面での重合反応を利用したミクロカプセルの調製法の確立を目的に研究を行った。すなわち、モノマーと架橋剤との共重合をカプセルに封入したい物質を含む粒子の表面で進行させることでポリマー膜を粒子上に被覆した後、粒子を溶解除去することでカプセルを調製する。この方法は操作が簡便であることに加え、重合可能な分子を幅広く利用できる可能性があり、用いる材料の種類や濃度などを調整することにより、カプセルの物性を簡単に制御できることが期待される。 はじめに、炭酸カルシウム粒子を含む溶液中で種々のモノマーと架橋剤との共重合を行いカプセル調製が可能なモノマーの探索を行った。その結果、メタクリル酸メチルとN,N'-メチレンビスアクリルアミドの共重合が粒子表面で進行しカプセル膜を形成することを確認した。また、自発的に粒子表面でカプセル膜を形成しないモノマーについて粒子表面に重合反応の起点となる分子を化学修飾する方法を検討した。RAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)剤を導入することで、N-イソプロピルアクリルアミドおよびメタクリル酸-2-ヒドロキシエチルにおいてカプセル膜の形成を確認した。これら調製できたカプセルについて、カプセルの物性や内包物質の放出特性などの調査を行った。
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