研究課題
核酸内包DDSは血液中に豊富に存在する分解酵素から核酸を守り、安定に血中に滞留し、標的組織へ集積することが求められる。本研究ではin vivoでFRETを計測することにより、核酸の局在だけでなく凝縮・脱凝縮状態を観察・定量する。これにより今までに得られなかった生体内でのDDSの動態・状態に関する知見をDDSデザインに反映させることが可能となる。初年度は高速in vivo FRETを用いた核酸内包DDSの血中安定性・組織移行性の検討を行った。まず生体顕微鏡に単純な光学ミラーを数枚追加して最大4つの蛍光分離を可能にした。これまでのプラスミドDNA(pDNA)を用いた実績を踏まえ、当初はFluorescein標識siRNAとCy3標識siRNAを混ぜた上でDDSに内包させ同様の検出を行った。しかしながら蛍光強度が低く検出困難な事例が多発したため、Fluorescein/Cy3ペア、Cy3-Rhodamineペア、Cy3-Cy5ペア、Alexa488/Alexa547ペアなどを次々と検証した結果、in vivo用のFRETペアとして最終的にAlexa488/Alexa547ペアを、Donor:Acceptorの標識比率を1:1で使用すると比較的良い結果が得られることが判明した。このようにして血流などの速い動きでもFRET測定が可能であることを確認した。ひき続いて蛍光強度の比をFRETの指標として血中における核酸の凝縮状態を測定している。
2: おおむね順調に進展している
おおむね順調に進展している。
核酸内包DDSは、標的細胞内における効率的な核酸分子の放出が求められる。つまり細胞室内でのsiRNA放出、核内でのpDNA放出である。細胞内・核内の評価を行うためには、GFPなどの蛍光タンパク質あるいはヘキストなどの試薬を用いて細胞や核を蛍光標識しなければならない。すなわちFRETペアに用いた2種類の蛍光標識以外に、他の蛍光が追加される。生体顕微鏡では最大4チャンネルの多色蛍光イメージングが可能だが、前述の如く単純な光学ミラーで分光するため各チャンネル間の漏れこみが問題となる。それぞれの蛍光を正確に分離するため、32チャンネルスペクトル検出器を用いる。演算処理によって細胞・核・FRETペアに用いた蛍光を分離し、生きたマウスの細胞内・核内における核酸の凝縮・脱凝縮を評価する。
顕微鏡周囲の物品(マウス固定器具・ガラス器具・レンズ・パソコン・ストレージなど)の購入に活用する。多色高速撮影、あるいはスペクトル撮影を行うため、得られるデータ量が膨大である。1日の実験で100GBを超えることもしばしばである。経験上、6ヶ月の実験で4TBのハードディスクが埋まるため、その都度データストレージを増設する。平成24年度に追加を見込んでいる。現在使用しているデータ取得用パソコンは平成21年3月導入した当時の最新式であるにも関わらず、撮影中にデータ処理が追いつかず時々フリーズする。平成24年度に最新式のパソコンに取り替えて、本来ならば不要なはずの再実験の数を減らす。現有のパソコンはデータ取得後の解析用として活用する。
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