無細胞合成でGタンパク質共役型受容体を合成し、リガンド結合能を持つ受容体を得ることよび一分蛍光測定への応用を目指して研究を開始した。最初に、GPCRを組み込む環境として、脂質ナノディスクの調製を行った。pET28a/MSP1D1遺伝子を大腸菌BL-21(DE3)pLysS株へ導入し発現を試みたが全く発現しなかった。そこで、菌株をより高発現が期待できるBL-21 Gold(DE3)に変更したところ、MSPタンパク質の発現が見られた。Niカラム精製を行い高純度のタンパク質溶液を得た。菌液1Lあたり30mg以上の精製タンパク質を回収可能であることを確認した。昆虫由来の無細胞合成系で合成したbeta2アドレナリン受容体がリガンド結合能を持つか確認するために、リポソーム共存下で合成した受容体への蛍光リガンドCA200689の特異的結合を全反射蛍光顕微鏡で観察した。蛍光リガンド溶液の容器への吸着を抑える工夫を行った後、リポソーム存在下で受容体の合成を行い蛍光リガンドの結合を評価したが、mRNA非添加のコントロールにおける非特異的吸着と比較して、有意なリガンドの結合は見られなかった。CA200689のリポソームや生細胞への非特異的吸着が多く見られため、一分子計測には不適と判断した。また、蛍光リガンドとして報告例のあるCy3-NAおよび、より非特異的吸着が少ないと予想されるAlexa647-NAの合成を行った。CHO細胞に発現したbeta2アドレナリン受容体をコイルドコイルラベル法で染色し、蛍光リガンドと共染色できるか試みたが、Cy3-NA、Alexa647-NAのいずれでも受容体を染色する事ができなかった。今後より特異性の高い蛍光染色法の開発が必要だと考えられる。また、無細胞合成でリガンド結合能を持つ受容体を得るためにはタンパク質透過チャネルを含む膜の添加が必要だと考えられる。
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