本課題研究では生体電子伝達体を磁気共鳴法のプローブとする新規機能イメージング法を開発することを目的として研究を進めてきた。ミトコンドリア電子伝達系におけるATP産生の過程では様々な電子伝達体が電子の授受に関与することが知られている。そのなかでも重要なユビキノン(CoQ10)は呼吸鎖I、IIから電子を受けIIIへ送る機能を担っている。本研究においてユビキノンがアルカリ性下で高濃度のユビセミキノン(ラジカル中間体)を形成し、さらにエレクトロンドナーであるNADHの添加でも同様に形成することを明らかにした。特にNADHの添加に着目し、CoQとNADHで作製したセミキノンラジカルは無酸素下で比較的安定であり、OMRIにおいて可視化できることを示した。さらにCoQHはNADHの濃度依存的に生成されることを明らかにした。ミトコンドリア機能可視化の可能性を検討するためにCoQHとミトコンドリアを反応させた結果、COQHはミトコンドリアにより速やかに代謝され、その代謝速度はミトコンドリアの容量依存的であった。さらに不活性化したミトコンドリアを用いた場合には代謝がほぼ完全に抑制されたことからCoQHをプローブとして用いることでミトコンドリア機能を評価できることが明らかとなった。電子伝達系呼吸鎖IIの機能評価法としてDecylCoQを用いた方法を知られている。本法で検討したCoQ0が呼吸鎖IIからの電子の授受に関与するか検討したところ、DecylCoQと同様に電子の授受に寄与しさらにその効果はDecylCoQに比べ高いことが明らかとなった。これらの結果より電子伝達体であるCoQをOMRIのプローブとして活用することで、ミトコンドリア機能を可視化できることが明らかとなった。今後は本研究をさらに発展させることで、ミトコンドリア関連疾患のOMRIを用いた機能解析への展開が期待される。
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