研究課題/領域番号 |
23790051
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
柴田 孝之 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10448491)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ウラシル / ベンズアミドオキシム / 蛍光反応 / ウラシル特異性 / DPD欠損症 / 尿中ウラシル定量 / ハイスループット診断 / 臨床検査 |
研究概要 |
本年度は、研究代表者が開発した、ベンズアミドオキシム(BAO)を用いるウラシル特異的蛍光反応に基づき、尿に含まれる蛍光性夾雑物質が蛍光を発しない励起波長で、尿に含まれるウラシルを蛍光検出できる新規BAO誘導体の探索研究を行った。芳香環にメチル基、アミノ基、ニトロ基など、種々の置換基を有する15種類のBAO誘導体を用いて、ウラシル由来の蛍光強度を測定した。その結果、どのBAO誘導体を用いた場合でも、蛍光波長のレッドシフトは観測されなかったが、BAOの3位にメチル基を導入した3-メチルBAOは、BAOと比較して約1.2倍強い蛍光をウラシルに対して与えた。他のBAO誘導体では蛍光強度の劇的な減少が見られた。そこで、3-メチルBAOを用いて、ウラシルの蛍光誘導体化反応における試薬の濃度・反応時間・反応温度などの影響を評価したところ、3-メチルBAOは、BAOと異なり室温でウラシルを蛍光誘導体化することが明らかになった。BAOによるウラシル蛍光反応は、反応時間は短いものの加熱を必要とし、この反応を尿検体に応用した場合、尿中の蛍光性夾雑物質由来の蛍光強度が変化するため、尿中ウラシルの定量にはHPLCなどの分離技術が必要であった。一方、3-メチルBAOを室温での尿中ウラシル蛍光検出に応用したところ、数十分以上の反応時間を必要とするが、BAOと同様に高いウラシル特異性を示し、さらに尿中夾雑物質の蛍光を変化させない可能性が示された。この結果は、反応液の蛍光強度を測定するのみで尿中のウラシル濃度を定量できる技術に展開できる可能性を示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年後の研究到達目標である、尿に含まれる蛍光性夾雑物質が蛍光を発しない励起波長で、尿に含まれるウラシルを蛍光検出できる新規BAO誘導体の探索は達成できなかったが、尿中夾雑物質の蛍光を変化させずに尿中ウラシルを定量できる可能性を見出したことから、研究到達目標とは異なるものの、反応液の蛍光強度を測定するのみで尿中ウラシルを定量できる技術として展開できることから、おおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、交付申請書に記載した研究目的に従いつつ前年度に得られた結果を踏襲し、健常人ボランティアから提供された尿サンプルを用いて、反応前後で尿中蛍光物質の蛍光強度を変化させず、かつ尿中ウラシルのみを特異的に蛍光誘導体化できる反応条件を明らかにする。この条件を、尿中ウラシルを定量するために標準添加法に応用し、反応液の蛍光強度を測定するのみで尿中ウラシルを定量できる操作法を確立する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は主に、各種試薬の購入費に充てるだけでなく、尿中ウラシル定量操作のルーチン化を確立するために研究補助員の人件費に使用する予定である。また、論文投稿に必要な諸費用と学会参加に掛かる費用を研究費から賄う予定である。
|