研究課題/領域番号 |
23790051
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
柴田 孝之 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10448491)
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キーワード | ウラシル / ベンズアミドオキシム / 蛍光反応 / 尿中ウラシル定量 / 臨床検査 / シトシン / オロト酸 / 核酸代謝 |
研究概要 |
前年度は、3-メチルベンズアミドオキシム(3-MBAO)を用いて、希釈尿を反応に付し蛍光強度を測定するのみで尿中ウラシルを定量できる手法を開発した。そこで今年度は、数人の健常人ボランティアから提供された尿資料を用いて本手法の信頼性を評価すると共に、マイクロプレートリーダーによる多検体の同時検査を試みた。 まず、標準添加法により1検体ずつ尿中ウラシルの定量を行ったところ、サンプル間で反応阻害率や尿雑物質の量に大きな差があり、尿を直接用いてウラシルを蛍光体に変換させるための標準プロトコールの作成が困難であることが分かった。そこで、反応阻害物質や蛍光性夾雑物に関して物性を評価したところ、このような物質はウラシルと比較して非常に低極性であることが明らかになった。そこで、希釈尿を有機溶媒で洗浄・抽出した後に蛍光反応に付したところ、全ての尿検体においてウラシル蛍光体のみが検出できることが分かった。更に、マイクロプレートリーダーによる10検体の同時尿中ウラシル定量も可能であることを見出した。 加えて、これらの研究課程でシトシン特異的な蛍光反応を発見した。本反応では、3-MBAOの代わりに4-トリフルオロメチルBAOを用い、反応液にジメチルホルムアミドを添加することで、ウラシルをはじめとする他の核酸類縁体に全く蛍光を与えないという、優れた特異性を示す。この研究成果は、既に学術論文へ掲載されている。また、反応に用いる塩基を水酸化ナトリウムから炭酸ナトリウムに変化させることで、オロト酸に高選択的な蛍光反応の開発にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
3-MBAOを用いた汎用性の高い尿中ウラシルの定量法の確立は、交付申請書に記載した「研究の目的」「研究実施計画」において最大の達成目標であり、これにほぼ成功した。また、研究課程で、シトシン及びオロト酸にそれぞれ特異的な蛍光反応を発見し、学術論文に掲載されるほどの研究につながった。前者は研究計画通りである一方、後者は研究計画調書に記載されていない新たな発見であることから、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、5-FU系抗がん剤の副作用に大きく関与するジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)欠損症患者の尿サンプルを提供できる機関の探索を行っており、既に1施設からDPD欠損の疑いがある患者の尿サンプルを受け入れている。今後は、本手法により簡便・迅速かつ正確に尿中ウラシルを定量でき、DPD欠損をはいスループットに検査できることを実証する必要がある。 また、シトシン及びオロト酸に特異的な蛍光反応を用いて、尿中/血中のシトシン及びオロト酸の検出技術の開発研究を展開しており、新しい疾病の臨床検査法へ応用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者は、病気のため平成25年4月~平成25年12月の期間を休職したため、当該経費を全く使用しなかった。 次年度は、本実施状況報告書に記載した内容の研究を遂行するための経費として使用する。
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