研究課題
クリーム剤などのエマルション製剤では、製剤安定性の劣化は主に水相と油相の相分離に伴って進行する。したがって、それら製剤の製剤安定性を評価する上で、相分離の挙動を正確に理解することは非常に重要である。現在のところ、エマルション製剤の製剤安定性評価方法は、目視による破壊的な方法以外になく、非破壊的かつ経時的な評価法の開発が強く望まれている。当研究課題では、分子イメージング技術の1つであるMRIを応用した新規製剤安定性評価手法の構築を試みた。前年度までの検討によって、T1緩和時間画像(T1マップ)および見かけの拡散係数画像(ADCマップ)などの水分子運動性可視化技術を応用することで、試料内部の相分離の様子を明確に観察できることが明らかになっている。さらに、局所NMRスペクトル取得技術であるMR spectroscopyを応用することで、選択した領域の成分分析にも成功している。最終年度の検討では、実際の製剤開発により近い条件で検討を行い、構築した新規評価法の実用性を評価することとした。まず、HLB値の異なるモデルクリーム剤を調製し、経時的に試料内部の相分離の様子を観察した。その結果、HLB値による相分離挙動への影響を明確することができ、さらに、安定な製剤が調製される最適なHLB値が決定された。続いて、市販製剤の容器として使用されるポリエチレンチューブに試料を充填し、同様の検討を行った。その結果、ポリエチレンチューブ内の試料の評価にも本手法が適用できることが明らかになった。以上の結果より、本手法は、エマルション製剤の製剤安定性を評価する上で極めて有効であると考えられる。今後、製剤開発・製造・品質管理など様々な場面での本手法の応用が期待される。
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Drug Dev. Ind. Pharm.
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