研究課題/領域番号 |
23790062
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
庵原 大輔 崇城大学, 薬学部, 助手 (40454954)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン / フラーレンC60 / 光線力学療法 / ナノ粒子 / 活性酸素 |
研究概要 |
フラーレン C60 は炭素原子が球状のネットワーク構造をしている直径約 1.0 nm の分子である。C60 は既存の光増感剤と比較して非常に高い量子収率や長波長の吸収スペクトルを持つことから、一重項酸素、スーパーオキシドアニオンラジカルなどの活性酸素種(ROS)を効率よく生成する光増感物質として注目を集めている。本研究では新規 C60 医薬の開発を企図し、可溶化剤として医薬品での使用実績があり、親水性で生体適合性に優れる 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CyD)を用いて C60 をナノ粒子化し、その複合体構造を解明するとともに、物理化学的特性や生物活性を明らかにした。溶液・固体 NMR などの各種スペクトル測定および粒度分布、ζ-電位、TEM などのコロイド粒子に関する表面分析の結果より、 HP-β-CyD は C60 ナノ粒子表面で相互作用(吸着)し、C60 ナノ粒子表面を広く覆い、安定な親水性の層を形成しているものと推察された。また、ESR測定の結果より、C60/HP-β-CyD ナノ粒子は可視光照射下においてスーパーオキシドアニオンラジカルや一重項酸素などの活性酸素種を効果的に生成した。さらに、C60/HP-β-CyD ナノ粒子は、可視光照射条件下でのみ細胞障害活性を示したことから安全性の高いナノ粒子であることが示唆された。本研究は優れた光増感作用を有し、ナノマテリアルとして注目されているC60 を生体適合性に優れる HP-β-CyD を用いてナノ粒子化し、その汎用性を高めるものであり、本研究で調製した C60/HP-β-CyD ナノ粒子は次世代型の光増感剤、DDS 用素材として有力な候補物質になるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではC60ナノ粒子を基盤とした、光増感剤、抗酸化剤、DDS用担体として効果的なC60ナノ粒子製剤の構築を目的として検討を行った。当初の予定通り、HP-b-CyDによるC60ナノ粒子の生成機構、ナノ粒子構造および凝集安定化効果の詳細を明らかにし、論文・学会発表を行った。また、本研究で調製したC60ナノ粒子が可視光照射下で活性酸素生成能を有し、HeLa細胞やA549細胞などの各種癌細胞に対し、障害活性を有することを明らかにし、論文・学会発表を行った。このC60ナノ粒子は担がんマウスに対しても優れた抗腫瘍効果を示し、副作用も確認されなかった。以上より、本研究の目的であるがん光線力学療法における次世代型の光増感剤として有用なC60ナノ粒子製剤の構築は順調に進展中である。
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今後の研究の推進方策 |
C60 ナノ粒子の癌光線力学療法への応用に焦点を絞り、C60/HP-β-CyD ナノ粒子のin vitro、in vivo 抗腫瘍効果を明らかにする。すなわち、C60ナノ粒子の可視光照射下での細胞毒性をHela細胞、A549細胞などのがん細胞を用いて検討する。また、担癌マウスを作成し、C60/HP-β-CyD ナノ粒子のin vivo 抗腫瘍活性を検討する。抗腫瘍効果はC60ナノ粒子投与+光照射後の腫瘍体積の変化から評価する。さらに、C60ナノ粒子をポリエチレングリコールやスチレン-無水マレイン酸コポリマー等で表面修飾したC60ナノ粒子を調製し、EPR効果を利用した腫瘍集積性の向上ならびに抗腫瘍効果の増強を期待する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成 24 年度はin vitro ならびにin vivo での光線力学活性の評価を主として行うため、メディウム、ディッシュ、蛍光試薬、マウスなどを購入する予定である。また、本研究を遂行するために必要不可欠な溶媒等の消耗品も購入する。さらに、研究成果の学会発表に必要な旅費、研究打ち合わせのための旅費にも使用する予定である。
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