研究概要 |
ミトコンドリアは、生体機能の維持に不可欠なエネルギー生産、代謝物の生合成を司る真核生物の細胞小器官である。この機能発現の中核を担うミトコンドリアトランスポーター(MTP)はミトコンドリア内膜に存在する膜蛋白質群で、様々な低分子代謝原料をミトコ ンドリアに供給するとともに、代謝産物を細胞質に輸送する。またヒト遺伝子中にある約50種のMTPのうち少なくとも13種が病態関連遺伝子であり、MTPの重要性は明らかである。本研究の目的はMTPの発現精製系を確立し、立体構造を解析することにより、その輸送メカニズムを解明することである。本研究ではまずヒトの疾患との関連が明らかな13種のMTP(CIC, PiC, AAC1, UCP1, 2, & 3, AGC2, ORC1, DNC, CAC,ODC, GC1, SLC25A38)の大腸菌発現系を確立し、安定同位体標識が可能なM9最小培地における発現および精製条件の検討を行った。その結果、UCP1, ORC1, CAC, ODC (36K)とGC1(38K)で良好な発現量が観察された。その他のMTPについては発現量がわずかであり構造解析には適さないと判断した。しかしながら発現したMTPはすべて不要性画分に移行しており、可溶化条件の検討が必要となった。Sarkosyl, Traiton X100, DDM, OGなどの界面活性剤をもちいた可溶化を検討したが、一部が可溶性分に移行するのみで十分な効率での可溶化には成功していない。またこれらのトランスポーターのメタノール資化酵母、無細胞系での発現を試みたが十分な発現を見なかった。最近、海外のグループがマウスUCP2の大腸菌を用いた発現および構造解析に成功した。一方本件ではヒトUCP2は発現していない。これを鑑みると異種由来のMTPをより広く解析候補とするなどの工夫が必要と考えられる。
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