研究概要 |
コンドロイチン硫酸 (CS) は軟骨に豊富に存在し、関節では水分保持等の役割を担っている。我々は、CSの合成に関わる硫酸基転移酵素の遺伝子変異によって、脊椎・骨端異形成症が引き起こされることを見つけた。この疾患は、進行性脊柱後側湾症・関節炎・関節拘縮・関節脱臼を特徴とするが、不明な点が多い。そこで、本研究では脊椎・骨端異形成症を関節および骨疾患のひとつのモデルとして、その発症のメカニズムを解明することにより、これらの疾患の将来的な治療法および治療薬のシーズを探求することを目的とする。今年度の成果としては、理化学研究所の池川志郎博士らと共同で、CSの合成に関わるガラクトース酸転移酵素の変異が関節弛緩を伴う脊椎骨端骨幹端異形成症 I 型を引き起こすことを発見し、Cell PressのAmerican Journal of Human Geneticsに掲載された。さらに、CSの合成不全による骨疾患の総説がJournal of Biological Chemistry (2013)に掲載された。 また、サメ軟骨から新規のオリゴ糖配列を7種類単離した(Glycobiology, 2013)。さらに、CSは様々な機能性タンパク質と相互作用するが、各疾患に関わる増殖因子と硫酸化修飾構造の異なるCS鎖との結合解離定数を明らかにした(Glycoconjugate Journal, 2013)。 さらに、CS-EのリガンドとしてReceptor for Advanced Glycation End Products (RAGE)を新たに同定し、癌の転移に関わることを発見した(Journal of Biological Chemistry, 2012)。 これらの研究論文を含め、国際誌に原著論文5報、総説5報、Book Chapter 1報を発表した。国内学会発表4回、国際学会での発表を1回行った。
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