研究課題
本年度は、“ASK3活性を指標とした浸透圧ストレス受容分子群のゲノムワイドスクリーニング”に関し、3次スクリーニングによる候補遺伝子の絞り込み、および候補遺伝子の解析を行った。昨年度までの2次スクリーニングで既に高浸透圧におけるASK3制御遺伝子候補は約60遺伝子程度まで絞り込めていたが、イムノブロッットを利用した3次スクリーニングにより、このうち約10種程度の遺伝子が、ASK3の脱リン酸化を制御する分子として確実性が高いと判断できた。実際、そのうちの一つの分子に関しては、生化学的な解析からASK3との結合や、制御メカニズムの解析が進み、今回のゲノムワイドスクリーニングが、確かにASK3制御分子の同定に至ったことを実証できたと考えている。最も興味のある浸透圧センサーの同定までには至っていないが、今後、本研究のスクリーニングで得られた分子の解析を進めることで、同定できる可能性も十分あると考えている。“ASK3下流分子の解析”でも、昨年度見出したASK3とWNK1-SPAK/OSR1経路の関係性を更に解析し、浸透圧応答性キナーゼであるASK3が、WNK1-SPAK/OSR1経路を介して全身血圧の制御に関わるという論旨で論文をまとめた(Nat. Commn., 2012, Naguro et al.)。さらに、昨年度立ち上げた細胞体積をモニターする実験系を利用し、浸透圧ストレス時の細胞体積変化においてもASK3が関与する可能性があることを明らかにした。以上のように、研究期間全体を通じてASK3の担う浸透圧シグナル伝達において、上流(ストレス受容)と下流(ストレス応答)の様々な面が明らかになった。特に、ASK3が血圧制御に関わるという知見は、高血圧の病態の理解と治療に新しいアプローチを与えるものとして大きな意義があると考えられる。
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