研究課題
現在、わが国は第三次覚醒剤乱用期にあり、薬物乱用および依存問題は大きな社会的問題となっている。依存性薬物の乱用により脳報酬回路の異常興奮が長期間持続すると、報酬回路に病的な可塑的変化が生じ、渇望を伴う依存状態になると考えられている。依存性薬物の乱用が薬物依存につながる分子機構は未だよくわかっていないが、薬物依存は持続性で長期断薬後もストレスなどにより容易に再発することから新たな遺伝子・タンパク質発現を伴うシナプスの機能的および構造的変化が関与していると考えられている。我々は種々のストレスによって発現変化を示す遺伝子としてNpas4を同定した。本研究では、覚せい剤(メタンフェタミン)依存症におけるNpas4の病態生理学的な役割を明らかにし、新規創薬標的分子となるかについて検討した。Neuro2A細胞を分化誘導するためにはリチウムを処置し、形態変化(突起の長さ)と機能変化(リン酸化synapsin I)およびNpas4、NeuNのレベルを定量した。また、Npas4発現ベクターおよびsiRNAを処置したNeuro2A細胞を用いて、リチウム処置による突起伸展がどう変化するかを解析した。また、Cdk5遺伝子プロモーターへのNpas4の結合をChIP assayで調べた。その結果、メタンフェタミン連続投与に伴いNpas4の発現が増加すること、Npas4はNeuNおよびCdk5遺伝子の発現制御に関与していることが示唆された。さらに、Npas4はCdk5の誘導を介してsynapsin Iのリン酸化を亢進することが示唆された。これらNpas4の発現とそれに続く神経細胞の機能的および構造的変化が薬物依存に伴う神経可塑性に関与していると考えられる。
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