本研究では、これまで代表者が得た知見から導かれる仮説“CRTH2は情動障害の新規創薬標的になる”を基礎・臨床の実験系で検証すると共に、CRTH2の中枢機能を分子レベルで評価できる新手法の開発を目的として実施した。平成25年度は以下の結果を得た。 1. CRTH2のshRNAベクター5種類の機能解析を行った。マウス神経芽細胞腫由来のNeuro2AにCRTH2発現ベクターと共に導入して検討を行った結果、CRTH2のmRNA発現を約20%まで抑制できるベクターを2種類同定した。 2. HPLCを用いてCRTH2の遺伝子欠損マウスの脳内モノアミン含量の測定を行った結果、野生型マウスと比較して、同マウスの海馬ではノルアドレナリンの含量が高値を示すことを見出した。 以上、前年度までの成果と併せ、本研究によって、中枢のCRTH2が種々の病態における情動や認知機能障害の新規創薬標的となる可能性がマウスとヒトで明らかになるとともに、その作用機構に関する神経基盤の同定や、今後のCRTH2の機能解析に資する新たな分子薬理学的解析系の確立が達成された。
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