研究課題/領域番号 |
23790087
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石本 憲司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (00572984)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | Lipin1 / 脂質代謝調節因子 / トリグリセリド生合成 / 脂肪酸酸化 / 肥満 / プロテオミクス / 細胞内局在 / 免疫沈降法 |
研究概要 |
Lipin1は、生体内において脂質代謝の恒常性を維持するのに重要な因子である。具体的には細胞質においてトリグリセリド生合成する酵素として機能する一方、核内においは転写共役因子として脂肪酸酸化関連遺伝子の転写を調節している。これらLipin1の2つの機能はどのような機構で制御されているのかほとんどわかっていない。本研究では、プロテオミクスの手法を用いてLipin1と相互作用する因子を同定することで、Lipin1がもつ2つの脂質代謝機能の新たな制御メカニズムを解明することを目的とした。最初にエピトープタグの1つであるV5タグを融合させたLipin1発現プラスミドを作製した。次に作製した発現プラスミドをヒト子宮頸癌HeLa細胞にリポフェクション法で導入し、細胞全抽出液を調製した。そして、調製した細胞全抽出液と抗V5抗体を用いて免疫沈降後、得られたサンプルを用いてWestern Blottingと銀染色を行った。その結果、Lipin1およびそれと共沈した複合体と予測されるバンドが確認できた。そこで、このサンプルを用いてLC-MS/MS解析を行ったところ、核と細胞質のシャトルタンパク質やアポトーシスの際にDNA断片化に関わるタンパク質などLipin1と相互作用が報告されていない数十個のタンパク質を見出すことができた。これらの解析結果のうち、コントロールと十分な差があると考えられる7個のタンパク質についてのcDNAクローニングを行った。現在、Lipin1と相互作用する候補タンパク質とLipin1が実際に相互作用するか免疫沈降法を用いて確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、Lipin1の特徴である2つの機能、すなわちトリグリセリド生合成と脂肪酸酸化についての制御メカニズムを解明することで、肥満症に対する治療戦略を提唱することである。この目的を達成するために本研究では、Lipin1をターゲットとした免疫沈降法とLC-MS/MSを組み合わせたプロテオミクス解析を使い、Lipin1相互作用因子を探索・同定を行う。当初の予定では、ヒト肝癌由来FLC4細胞を用いて免疫沈降を行う予定であったが、FLC4細胞で解析したところLipin1タンパク質と相互作用している因子が少なかった。これはFLC4細胞中にLipin1タンパク質を十分量発現させることができなかったことに起因すると考えられる。そこで、プラスミドの導入効率が高い細胞であるヒト子宮頸癌HeLa細胞に変更し同様な検討を行ったところ、Lipin1と共沈する複数のタンパク質を得ることができた。その後、プロテオミクスの手法を用いて、Lipin1相互作用因子の候補を見出すことができ、今年度予定していた計画を達成できた。また今年度の研究では、次年度に予定していた相互作用因子のcDNAクローニングもすでに完了しており、当初の計画以上に本研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では研究計画書通りに、LC-MS/MSで探索した因子とLipin1との関係性を明らかにし、これら因子がLipin1のもつ機能にどのような影響を与えるかを調べていく。具合的にはLipin1の相互作用因子の候補として着目した因子とLipin1が実際に相互作用をしているか否かについて調べるために、細胞中にLipin1とその候補因子を共発現させ、免疫沈降法により解析する。次にLipin1との相互作用が確認できた因子について、Lipin1の細胞内局在に与える影響をWestern Blotting法や免疫蛍光染色法により解析する。さらにLipin1とその相互作用因子が結合することにより、Lipin1のもつ2つの機能にどのような影響を及ぼすか調べる。これらの解析を通じて、Lipin1を基盤とした肥満治療に向けた新たな予防・治療法を提唱したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を遂行するにあたり、遺伝子工学、培養用試薬・器具等を必要とするため、それぞれの購入にあてることにする。また本研究の成果を発表するために学会出張経費、ならびに本研究の推進に必要な調査・情報収集のための出張旅費に使用する。
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