研究課題/領域番号 |
23790091
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
城野 博史 熊本大学, 医学部附属病院, 准教授 (40515483)
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キーワード | 肺線維症 / CYLD / 慢性炎症 / TGF / 腫瘍抑制遺伝子 / 脱ユビキチン化酵素 |
研究概要 |
本研究期間内に、CYLD が制御する肺線維化のメカニズムを明らかにすることを目的に、以下の検討を行った。 1.細胞培養系を用いたCYLD の機能解析:肺由来の細胞株に対し、siRNAを用いた CYLDの遺伝子発現抑制を行い、肺線維症関連遺伝子の発現量変化を評価した結果、CYLDの欠損によりコラーゲンやフィブロネクチンなどの肺線維症の際に過剰に発現する遺伝子群の発現が著しく上昇した。 2.肺線維化モデルマウスを用いた解析:CYLD 欠損マウスに肺炎球菌感染症を起こすことにより誘発される肺線維化組織において、前述の肺線維症関連遺伝子(コラーゲンやフィブロネクチンなど)の発現上昇が起きていることを明らかにした。 3.CYLD 発現抑制メカニズムを解明:肺由来の細胞胞株を用いCYLD発現抑制メカニズムの解明を行ったところ、IL-6などの一部の炎症性サイトカイン処理または低酸素状態によりCYLDの発言が著しく低下することが明らかとなった。 以上1~3の結果より、肺線維化におけるCYLD機能不全の分子病態メカニズムの一端が明らかになり、発現抑制メカニズム解明に関する基礎的知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、肺の線維化が病態発現に深く関与している肺線維症ならびに肺癌に焦点を当て、CYLD に着目した病態解析を行い、CYLD が制御する肺線維化メカニズムを解明することを最終目的としているが、本年度の研究結果から、1.CYLD の発現低下により細胞レベルで肺線維症関連遺伝子が著明に上昇していること、2.CYLD 欠損マウスに誘発される肺線維化組織においても肺線維症関連遺伝子が著明に上昇していること、3.CYLD の発現が様々な刺激により低下する可能性が示されたこと、などの成果が得られており、次年度の移行の研究計画を遂行するうえで十分な基礎的知見が揃っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果らえられた基礎的知見を基盤とし、次年度は、1. 肺線維化過程における CYLD の役割の解明(肺線維化モデルマウスを用いた解析、 細胞培養系を用いた CYLD の機能解析)の継続による肺線維症の詳細な病態解析、2.線維化肺組織における CYLD 発現低下メカニズムの解明、また、新たに、3. 肺癌を誘発する肺線維化における CYLD の機能解明、を開始することで、新規慢性炎症制御因子 CYLD 機能低下の肺線維化における意味論を明らかにしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度以降は、消耗品として、リアルタイム PCR 関連費、各特異的種抗体購入費に加え、培養細胞や疾患モデル動物を用いたメカニズム解析を開始することが想定され、遺伝子導入試薬、siRNA関連試薬、細胞培養関連費および動物関連実験費等を計上している。また、旅費として日本分子生物学学会などでの成果発表および論文投稿費などをそれぞれ計上している。
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