研究課題
大コンダクタンスCa活性化K(BK)チャネルは、血管平滑筋の細胞膜に発現し、筋小胞体膜上のリアノジン受容体とCa動態が厳密に制御されたCaマイクロドメインで機能すると想定される。本研究では、全反射蛍光(TIRF)顕微鏡を用いて、Caマイクロドメインに集積する分子群やそれらの分子間相互作用を可視化解析し、このような複合体を安定化させる足場構造の同定とその機能的意義の解明を目指した。ラット大動脈平滑筋細胞にBKα-YFPを一過性発現させた後、その一分子動態をTIRF画像解析した。細胞骨格の一種であるアクチンの重合阻害薬cytochalasin Dを平滑筋細胞に前処置すると、BKαの拡散係数が増加した。一方、アクチンの重合促進薬jasplakinolideを処理した後、cytochalasin Dを添加しても、BKαの挙動は影響を受けなかった。次に、細胞膜ラフト構造の一種であるカベオラとその構成成分カベオリン(Cav1)分子に注目した。BKα-YFPとCav1-CFPを共発現させたHEK細胞において、その両者の共存率は20%程度だったのに対し、平滑筋細胞では約70%だった。カベオラ構造を破壊するmethyl-β-cyclodextrinを平滑筋細胞に前処置すると、BKαの拡散係数が増加した。TIRF観察下でのFRET法により、BKαとCav1が相互作用していることが分かった。さらに、そのFRET効率は、HEK細胞よりも平滑筋細胞で有意に大きかった。以上の結果より、BKチャネルの活性本体であるBKαの分子動態は、アクチンのような細胞骨格やカベオリン分子との相互作用によって抑制的に制御されていることが示された。本研究成果は、血管平滑筋の興奮性を規定するCaマイクロドメインの生理的意義の更なる解明と、それらを基盤としたイオンチャネル創薬や循環器系疾患治療法の開拓につながると考えられる。
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