研究課題
私たちはこれまで、アルツハイマー病発症に関わるAβの前駆体タンパク質APPが、ERADに関与するユビキチンリガーゼHRD1の基質となることを明らかにした。さらに、アルツハイマー病患者の大脳皮質において、HRD1のタンパク質が不溶化により減少していることを見出している。今回私たちは、HRD1の減少とアルツハイマー病発症の関連性を明らかにするため、HRD1のノックアウトマウスにおいて、Aβの蓄積量が増加するか検討した。その結果、24ヶ月齢のHRD1ノックアウトマウスにおいてAβの蓄積量は、野生型のマウスと有意な差がないことが判明した。次年度では、APPのトランスジェニックマウスとHRD1ノックアウトマウスを掛け合わせることで、Aβ産生への影響を検討する必要がある。また、マウスの加齢に伴うHRD1タンパク質の量的変化とくに、HRD1の不溶化について解析した。その結果、HRD1のタンパク質の不溶化は認められず、HRD1タンパク質量に変化はなかった。私たちはこれまでの研究で、HRD1が酸化ストレスである過酸化水素、ロテノン、4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)により不溶化することを明らかにしている。今回私たちは、HRD1が4-HNEによる直接修飾を受けるか否か検討した。その結果、HRD1は4-HNEにより、分子量が増加し、4-HNEに対する抗体を用いてHRD1が4-HNEによる修飾を受けていることが明らかとなった。このことからHRD1は酸化物によって修飾を受けることで不溶化する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は研究代表者の異動により研究計画に遅れがあったが、前年度までの実験が予定より進んでいたため、当初の実験計画と比べて遅れはない。
HRD1ノックアウトマウスに関しては、期待した結果が得られなかったため、今後はAPPトランスジェニックマウスと掛け合わせることで、Aβ産生の負荷をかけた状態で、Aβ産生に対するHRD1発現低下の影響を検討する。
本年度は研究代表者の異動により研究計画に遅れがあり、繰越金が生じたが、消耗品に関しては元々低めに見積もっており、次年度は繰り越した額を合わせても余剰のものはないと考える。
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