私たちはこれまで、アルツハイマー病発症に関わるAβの前駆体タンパク質APPが、ERADに関与するユビキチンリガーゼHRD1の基質となることを明らかにした。さらに、アルツハイマー病患者の大脳皮質において、HRD1のタンパク質が不溶化により減少し、HRD1が酸化ストレスである過酸化水素、ロテノン、4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)により不溶化することを証明している。今回私たちは、HRD1の修飾部位を質量分析によって同定した。その結果、HRD1の酵素活性に重要なRING-finger領域のシステイン残基が酸化修飾を受けることが判明した。また、このシステイン残基を保護する目的で、N-エチルマレイミド(NEM)で前処理したところ、4-HNEによる分子量増加がNEMによって抑制された。このシステイン残基は、亜鉛と配位することで、RING-fingerタンパク質の立体構造形成に重要な部位であり、このシステイン残基の修飾は、ユビキチンリガーゼ活性の失活もしくは活性異常を来すことが他のユビキチンリガーゼで報告されている。このことからHRD1は、酵素活性部位にあるシステイン残基が酸化修飾を受けることで不溶化・減少する可能性が示唆された。以上の結果をまとめ、PLOS One誌に発表した。
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