研究課題/領域番号 |
23790097
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
奥田 隆志 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (00322040)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | コリントランスポーター / エンドサイトーシス / アセチルコリン |
研究概要 |
コリン作動性神経末端には特異的な高親和性コリン輸送系が存在し、細胞外からのコリン輸送によりアセチルコリン合成に必須な前駆体供給の役割を果たす。この輸送系を担う高親和性トランスポーターCHT1はアセチルコリン合成の律速段階であり、アセチルコリン合成・放出の制御に重要である。我々は、CHT1の細胞内移行は脳シナプトソ-ム画分・前脳基底部初代培養神経細胞・培養細胞発現系のいずれの系においても細胞外の基質やpHによって促進されるとともに、阻害剤であるHC-3で阻害されることを明らかにし、その詳細な分子機構を調べた(Okuda et al., J Neurosci., 2011)。培養細胞発現系におけるRNAiや薬理学的実験の結果から、基質により誘導されるCHT1の細胞内移行はクラスリン非依存的・ダイナミン依存的エンドサイトーシスを介するものであった。また、細胞表面発現量の変動を指標としたCHT1リガンド探索により、特異的HC-3結合活性を上昇させる化合物としてalpha blockerであるphenoxybenzamine (PBZ) を見出した。HEK293細胞において、PBZは濃度・時間依存的に特異的HC-3結合活性を数倍に増大させた。HC-3結合の置換実験の結果から、PBZはCHT1のHC-3に対する親和性を増加させるとともに、基質であるコリンに対しての見かけ上の親和性を約1,000倍減少させることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の23年度計画における主要な課題であった「リガンド依存性CHT1細胞内移行の解析」が順調に進み、J Neurosci.誌に論文発表を行った。また、CHT1のリガンド探索も順調に進んでおり、CHT1と特異的に相互作用する化合物として新たにphenoxybenzamineを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
CHT1結合タンパク及び複合体成分の同定を目指す。CHT1細胞内領域のGST融合タンパク質を大量発現・精製してカラムに結合させ、脳組織からCHT1結合タンパク質の精製・同定を試みるとともに、脳シナプトソ-ム標品を出発材料として特異的抗体を用いたCHT1タンパク複合体の精製法を確立し、質量分析を用いたプロテオミクス解析による複合体成分の同定を行う。また、CHT1の特異的HC-3結合活性を上昇させる化合物としてphenoxybenzamine (PBZ)を見出したので、その詳細な分子機構を明らかにする。予備的結果からPBZはCHT1の特定の部位をアルキル化して構造変化を引き起こし、その結果としてCHT1のリガンドに対する親和性に相反する効果を及ぼすと推測されるので、CHT1のPBZ結合部位を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費も、本研究実施に必要な試薬など主に物品費に充てる予定である。内訳は、遺伝子組み換えに必要な基本的分子生物学試薬、生化学試薬、リガンド結合実験などで頻用する放射性リガンド、細胞培養に必要な器具・培地・血清などである。本研究実施に必要な機器は、申請者の所属講座および所属大学の共通機器センターに整備されているため、新しく設備備品を購入する予定はない。
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